××UnderDiary
第8章 「俺だけだ」
「聞いてる?」
首をかしげて顔を覗き込んできた少女に、千尋は一歩後ずさりをして歯切れの悪い返事をする。
「聞い、てる……」
「じゃあ、答えてよ」
どこか苛立っているようなその声色に、千尋は困惑して明るい茶髪をかきあげた。
――こんな小学生相手に後ずさりしてどうすんだよ。
自分自身の行動に疑問を抱きながら、きつい目つきの少女へ口を開いた。
「……いや、なんつーか、人の下につくのがイヤなんだ」
「永井さんでも?」
「そりゃあ、なあ」
――永井も人間だろ。
そう言いかけた千尋の口を、少女のむくれたような表情が強制的に閉ざした。