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第8章 「俺だけだ」
「永井さんはおにーさんの力がほしいの。私何度も聞いたから知ってるの!」
少女が初めて年相応の物言いをしたことに、千尋は唖然とした。
「おにーさんが入ってくれなくて困るのは永井さんなんだから、おにーさんがいいって言うまで私毎日ここに来る!」
ランドセルを揺らせながら大きなリアクションでそう言い張る少女に、千尋は少しずつ言いようのない笑みがこみ上げてきた。
その様子に気づいたのか、少女は口をとがらせて閉口する。
――得体のしれない美少女かと思えば、ただのガキだったり……。
――こんなヤツとは久しぶりに会ったな。
自由とはいえ常に警戒を持っていなければならないこの地区で、その少女はどこまでも異質だった。