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第9章 愛情の欲情

「あんなもん、忘れるようなもんでもねえし……」


 そういえば学生鞄も見つからないことを思い出して、千尋は首をかしげる。

 ――明日の朝にでも、それとなく聞いてみるか。

 そう考えている千尋の目の前で、パソコンのディスプレイが煌々と光っていた。

 茶髪にピアスという外見に似合わず情報処理を得意としている千尋は、その手の事務作業を任されることが多い。

 が、現在画面内に映し出されているこのビルの浴室からは仕事をしようという気など微塵も感じられない。

 ただ一点の場所からではなく、九つも様々な視点から中の様子が映されているそれはどうみても隠しカメラからの映像だ。

 しかし室内のカギを閉めたことを確認した千尋は、なんでもないようにヘッドフォンをつけて動画の再生ボタンを押す。

 そうして千尋が無表情にそれを眺めている中、画面の中にひとり身体に何も身に着けていない少女が現れた。

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