アルカナの抄 時の掟
第8章 「隠者」正位置
「それでも、立ち止まってはいなかった。前に進もうとあがいてた…」
そうだ。私、いつの間にこんな臆病になってたんだろ…。きっと、アルバートがこれを書いてくれたときの私は…――アルバートが好きになってくれたのは、自分を見失ってない私。
アルバートが教えてくれたのは、身動きが取れなくなるほど慎重になることじゃない。前を向いて先のことを考えながら、自分で進むこと。
「…忘れてたよ」
カオルはペンを取り出すと、見返しに書かれた目標に、『ただし、自分らしく!!』とでかでかと書き足した。
ふぅ、と息をつく。安堵のため息ではない。カオルは窓辺に立ち、外を見た。白く眩い光に照らされ、目を細めた。
その光が鮮やかな橙色になり、やがて沈黙する頃、ベッドに寝転がっていたカオルが身を起こした。部屋を出ると、椅子に座ったヴェキと目が合う。
「お食事ですか?」
休憩中なのだろうか、書類の置かれた机ではなく、カップを手に、テーブルでくつろいでいる。
「はい」
「そうですか」
ヴェキはそう言うと、カップに目を落とし、口をつけた。
カオルは、静かに離れを出る。ヴェキは閉まる扉をちらりと見ると、手もとのカップをテーブルに置いた。すっ、と立ち上がり、壁に掛けてあった小剣を手に取る。扉へ向かい、部屋を離れた。
そうだ。私、いつの間にこんな臆病になってたんだろ…。きっと、アルバートがこれを書いてくれたときの私は…――アルバートが好きになってくれたのは、自分を見失ってない私。
アルバートが教えてくれたのは、身動きが取れなくなるほど慎重になることじゃない。前を向いて先のことを考えながら、自分で進むこと。
「…忘れてたよ」
カオルはペンを取り出すと、見返しに書かれた目標に、『ただし、自分らしく!!』とでかでかと書き足した。
ふぅ、と息をつく。安堵のため息ではない。カオルは窓辺に立ち、外を見た。白く眩い光に照らされ、目を細めた。
その光が鮮やかな橙色になり、やがて沈黙する頃、ベッドに寝転がっていたカオルが身を起こした。部屋を出ると、椅子に座ったヴェキと目が合う。
「お食事ですか?」
休憩中なのだろうか、書類の置かれた机ではなく、カップを手に、テーブルでくつろいでいる。
「はい」
「そうですか」
ヴェキはそう言うと、カップに目を落とし、口をつけた。
カオルは、静かに離れを出る。ヴェキは閉まる扉をちらりと見ると、手もとのカップをテーブルに置いた。すっ、と立ち上がり、壁に掛けてあった小剣を手に取る。扉へ向かい、部屋を離れた。