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アルカナの抄 時の掟

第9章 「審判」正位置

カオルが宮殿へ戻ってきて何日か過ぎた頃、投獄されているセレナは、うんざりしていた。毎日続けられている拷問と尋問にではない。

「…何度来たって同じよ」
堅いベッドに座るセレナが、吐き捨てるように言った。

「教えてほしい。なんであんなことしたの?」
檻の向こうに立つカオルが近づく。

「殺したいほどあなたが嫌いだからって、何度も言ってるでしょ」
苛立ちながら言う。

「…そう。じゃあ、言い方変える。…誰の命令?」
カオルがピンポイントで切り込むと、セレナが顔色を変えた。

「…なに、新手の尋問?さっきのもそうだけど、同じこと毎日聞かれてるわよ」

「――だけど答えは同じ。誰の指図でもない。すべて私の意思よ。あなたが嫌いだから。だからやったの」
セレナの目は、憎しみに満ちていた。そこまで憎まれていたとは…なにかしたのだろうか。

「あなたみたいに、努力すれば何でもうまくいくと思ってる人間、大嫌いなの。本当の努力をしたこともないくせに。本当のどん底を知りもしないくせに!」
もはやヒステリック気味になっていた。カオルは無言で聞いている。

「自分の幸せに気づきもしないで。いつもヘラヘラ笑って!大嫌い!大嫌いよ!!」
セレナの叫びが、薄暗い牢獄にこだました。我に返ったようにセレナがうつむく。


「…どん底って、あなたが養女になる前のこと?」

「そうやって、人の踏み入れられたくない部分までずかずかと…って…」
驚愕の表情でカオルを見る。なぜそれをあなたが。

「ごめんね。聞いちゃったの」
誰に、とは言わなかった。セレナは諦めたように口を開いた。

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