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アルカナの抄 時の掟

第9章 「審判」正位置

「――…話したわよ」
これで満足?とばかりにセレナが言った。

私は…なにもわかってなかった。国の成り立ちは、知識としては学んでたけど。

だが、今は。同情よりも、反省よりも、しなければならないことがある。カオルは、じっとセレナを見る。


…セレナは、まだ全部話してない。

「だから…国の転覆に“手を貸した”の?」
カオルが言うと、きっ、とセレナがねめつけた。

「しつこいわね。私の意思って言ってるでしょ!」


「…ヴェルテクス王国」
ぼそりとその単語を出すと、セレナは反応した。

「…そこまで知ってるんじゃない」
皮肉げに口角をあげて呟き、セレナはまた下を向いた。

やっぱり、アルバートの考えてる通りなんだ。

「――もう疲れたわ。これ以上、私からはなにも出ないわよ。ここにいても仕方ないし…そんなに暇なら、“宮殿の植え込みの手入れでもしてきたら”?」
顔を背けながら言う。

植え込み…?

「そうだね。今日はここまでにして、“寄り道して”帰ろうかな」
意味を汲み取ったカオルはそう言い、「“また”来るから」と地下牢をあとにした。





外へ出ると、日は落ちており、少し肌寒い。腕をさすりながら、臣下の宿舎方面へ向かった。

植え込みと言っても、宮殿じゅうにあり、それらをすべて調べるとなると夜が明けてしまう。だが、カオルはなんとなくこの辺りになにかある気がしていた。

以前、フレアを見かけた――この角の辺り。植木の中に手を突っ込む。だが、あるのは枝と葉だけだ。諦めずにガサガサとやっていると…明らかに違う感触。

引っ張り出すと、それは、くしゃくしゃに丸め込まれた紙だった。

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