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アルカナの抄 時の掟

第9章 「審判」正位置

足早にその場を離れ、仮の自室へ向かう。ヴェキの姿はなかった。ちょうどいい。

部屋に戻ると、外から見えない位置にテーブルを動かし、先ほどの丸まった紙をさっそく広げてみた。が、拍子抜けする。白紙なのだ。

どういうこと…?

ライトに照らし、もう一度見てみる。だが、やはりなにも書かれていない。わからない。これには何の意味があるのだろうか。

しかし、あまり長い間所持しているのは危険だ。いつからあそこにあったのかわからないが、早めに戻しておかなければ。

うーんと唸る。時間切れになる前に、なんとか突き止めたい。

…少し、落ち着こう。

カオルは立ち上がる。鞄から適当なノートと辞書を出し、例の紙を覆い隠すようにテーブルに広げた。

その時、扉の音がした。ヴェキが帰ってきたようだ。自然と、玄関の方へ目がいく――その拍子に、カオルの肘になにか固いものが触れた。

嫌な予感がして、絶句する。恐る恐る見ると、コップが倒れていた。

やっば…!!

昼に飲んだものだ。飲み干したはずだが、残っていた氷が溶けたようだ。水がこぼれ、広がっていく。…ノートと辞書はアウトだった。

下の紙は無事でありますように…っ!

ノートをどかし、青ざめる。紙も少し濡れていた。

…ギャー!!

しかし、よく見ると、様子が違うことに気づく。…なんと、濡れたところに文字が浮き出ていた。

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