テキストサイズ

アルカナの抄 時の掟

第9章 「審判」正位置

「私はレイミエの第一皇妃。ヴェルテクス国王に話があってここに来た」
射抜くような目が、ヴェルテクスの若き王に向けられている。さすが、王は怯まない。むしろ面白いとばかりに口角を上げた。

「ほう。なんだ、話ってのは?」

「面白い話を二つほど。まず一つは…レイミエにいる何人かのスパイのこと」

ヴェルテクスの王は、変わらずニヤニヤと聞いている。カオルも負けじと笑みを深めた。

「裏切りがわかったから、全員捕らえようと思ったんだけど。どうもその人たち、“ここ”の出身らしくてね」

「ヴェルテクスのか?」
マジかよ、といった顔を作り、白々しく国王が言った。

「そう。しかも、その筆頭が国王陛下の親戚みたいで?」

「王家の血を引く我が親族が、スパイだと」

「本当なら極刑なんだけど、一国の王族でしょ?そちらとは“仲良く”したいし、ちょっとそれは考えものなんだよね」

「ふうん。そこまではっきりと言うってことは、たぶん何らかの裏づけがあるんだろうな?」
遠回しに、証拠を出せ、と言っている。

「もちろん」
カオルは携帯電話を取り出した。

「これには、ヴェルテクスのとある臣下と、国王陛下のはとことの会話が録音されてる」

「録音?」

「聞いた会話をとっておいて、また再現できるの。あとでそれをするんだけど、その前に…もう一つ面白い話があるって、さっき言ったよね?それなんだけど――」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ