アルカナの抄 時の掟
第9章 「審判」正位置
「あなた、若いのに…“ ハ ゲ ”てるんだってね!」
ぷくく、と笑いを堪えながらカオルが言うと、国王の顔がひきつった。
「な……」
「最近見つかって、半狂乱だったらしいじゃん。それも、ここに入ってるんだよね~?」
カオルは携帯を操作する。何十分にも及ぶ会話が始まった。
内容は、左大臣にも右大臣にも付かない中立派のほとんどがスパイであること、その中心人物がヴェルテクス国王のいとこであることなどが示唆されるものだった。
さらに、スパイの男は、プライベートなこと――フレアにフラれたことまでも赤裸々に告白していた。
だが、それだけではなかった。相手の男が、近況を報告し始めた。
『今はまだ、戻らない方がいい。実は、陛下の頭に“ハゲ”を見つけてしまってな…。我々も“総力をあげて”それを“隠していた”んだが…』
『とうとう陛下がお知りになってしまい、半狂乱になられて…やっとのことで落ちつかせたんだが、まだご機嫌は直っていないんだ』
再生が終わると、国王は青ざめていた。カオルは何度もここを、特に「陛下の頭にハゲを見つけてしまってな…」の部分を繰り返し再生した。
『陛下の頭にハゲを見つけてしまってな…』
『陛下の頭にハゲを見つけてしまってな…』
『陛下の頭にハ』
「やめろ!!」
「まだ若いのにねぇ。国王がその若さでもう“ ハ ゲ ”てるなんてねぇ。最近領土を拡げて、勢いも“ 激 ”しいヴェルテクス王国の若き王が、“ ハ ゲ ”てるなんてねぇ」
“HAGE”の部分を強調する度、国王は眉をピクリとひきつらせた。
「ハゲと言っても小さなものだ!」
最終的に開き直り始めた国王。それでもカオルは余裕の表情だ。
「たとえそうだとしても、民衆にはどう広まるかなあ。噂には尾ひれはひれがつくものだからねぇ」
「…脅しか?建国したての弱小国家が、このヴェルテクスに?」
国王が言うと、どこかから「この国だって建国からそこまで経ってないくせに…」という呟きが聞こえ、国王がギロリとにらんだ。
「そうじゃない、これは取引」
くすりと笑うと、カオルは最高の笑顔で言った。
ぷくく、と笑いを堪えながらカオルが言うと、国王の顔がひきつった。
「な……」
「最近見つかって、半狂乱だったらしいじゃん。それも、ここに入ってるんだよね~?」
カオルは携帯を操作する。何十分にも及ぶ会話が始まった。
内容は、左大臣にも右大臣にも付かない中立派のほとんどがスパイであること、その中心人物がヴェルテクス国王のいとこであることなどが示唆されるものだった。
さらに、スパイの男は、プライベートなこと――フレアにフラれたことまでも赤裸々に告白していた。
だが、それだけではなかった。相手の男が、近況を報告し始めた。
『今はまだ、戻らない方がいい。実は、陛下の頭に“ハゲ”を見つけてしまってな…。我々も“総力をあげて”それを“隠していた”んだが…』
『とうとう陛下がお知りになってしまい、半狂乱になられて…やっとのことで落ちつかせたんだが、まだご機嫌は直っていないんだ』
再生が終わると、国王は青ざめていた。カオルは何度もここを、特に「陛下の頭にハゲを見つけてしまってな…」の部分を繰り返し再生した。
『陛下の頭にハゲを見つけてしまってな…』
『陛下の頭にハゲを見つけてしまってな…』
『陛下の頭にハ』
「やめろ!!」
「まだ若いのにねぇ。国王がその若さでもう“ ハ ゲ ”てるなんてねぇ。最近領土を拡げて、勢いも“ 激 ”しいヴェルテクス王国の若き王が、“ ハ ゲ ”てるなんてねぇ」
“HAGE”の部分を強調する度、国王は眉をピクリとひきつらせた。
「ハゲと言っても小さなものだ!」
最終的に開き直り始めた国王。それでもカオルは余裕の表情だ。
「たとえそうだとしても、民衆にはどう広まるかなあ。噂には尾ひれはひれがつくものだからねぇ」
「…脅しか?建国したての弱小国家が、このヴェルテクスに?」
国王が言うと、どこかから「この国だって建国からそこまで経ってないくせに…」という呟きが聞こえ、国王がギロリとにらんだ。
「そうじゃない、これは取引」
くすりと笑うと、カオルは最高の笑顔で言った。