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アルカナの抄 時の掟

第10章 「世界」正位置

放課後、いつもの通学路。見上げれば、半分の空。まだ明るさを残した空。この空のどこかに、向こうで出会った人たちがいるのかな。

アルバートも…同じ空を見てるのかな。でも、そうだ。どの時代を、どこで過ごしているかはわからない。自分と同じ時間を過ごしているかは――今を生きてるとは、限らない。

いつか…会えるかな。

そう思いながら、空を仰ぎ見るのをやめる。歩き出そうとした時、正面から何かが近づいてくるのがわかった。自転車だった。

あの自転車は…。

乗っている人に目を移す。この前の人だ。彼に似た青年。

だけど、すれ違う瞬間――近くで見たとき、それは違うと確信する。似た人じゃない。彼は…あの人は。

「…待って!!」
考える前に、足が動いていた。青年はそのまま遠ざかっていく。

「そこの自転車っ…待って…!!」
お願い…止まって。叫びながら走る。

と、自分のことだと気づいた青年が、自転車を止め、振り返った。息も絶え絶えに、なんとか追いつく。

よかった…、止まってくれた。息と鼓動を落ち着かせて、顔をあげる。もう一度よく彼を見ると…泣き崩れた。

「っ……」

やっぱり…やっぱりアルバートだ。

「うっ…アル、バート…ぉ…っ」
ぼろぼろと涙を流し始めると、青年はぎょっとした。

「ちょ……」

「っう、会い…たかった、よぉ…っく、う」
うわあん、と大声で泣くと、青年はさらにうろたえた。ぽりぽり、と頭をかくと、言いづらそうに口を開いた。

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