アルカナの抄 時の掟
第2章 「愚者」逆位置
なんとなくアルバートが戻るのは“すぐ”ではなさそうだったので、カオルもいったん部屋に戻り、鞄を取りにいくことにする。エントランスホールの階段下でしばらく待っていると、ようやくアルバートが現れた。
「おまたせ~」
優雅に階段を降りてきたアルバートは、昨日のチャドル+ターバンのような姿ではなかった。が、代わりにクーフィーヤのような、ヒラヒラしたアラビアンな帽子を被り、頭部を覆っていた。さらに、首もとから腹部ほどまでの大きめの布を、ストールのようにしてまとっている。
「うわなにその格好」
怪しさ全開である。…皇帝ってこと、隠してるのかな。
「思ったより時間かかっちゃったね。さあ、いこうか」
…行くの?ほんとに?
アルバートはニコニコと歩き出すと、エントランスホールを出ていく。カオルも不安ながらにあとを追った。
この世界に来たときに二人が倒れていた、あの道へと向かう。宮殿からそう遠くはないので、すぐに着くだろう。街は昨日より少し時間が遅かったためか、より多くの人々で溢れていた。
見上げると、今日もきれいな晴れ。なんとなく青空を見ていると、紅い鳥が真っ直ぐに、二人が歩く方向と同じ方へ飛んでいくのが見えた。
そして気づけば、人混みの中にアルバートを見失っていた。
「あれ…アルバート?」
辺りを探すが、あの怪しい頭は見つからない。
「アルバート…アルバート!」
聞こえるのは、街の人々の活気に満ちた声だけだった。
そのとき。
「わっ…!」
どん、と肩に衝撃が走り、よろついて手がゆるんだ。瞬間、鞄を奪われていた。
「おまたせ~」
優雅に階段を降りてきたアルバートは、昨日のチャドル+ターバンのような姿ではなかった。が、代わりにクーフィーヤのような、ヒラヒラしたアラビアンな帽子を被り、頭部を覆っていた。さらに、首もとから腹部ほどまでの大きめの布を、ストールのようにしてまとっている。
「うわなにその格好」
怪しさ全開である。…皇帝ってこと、隠してるのかな。
「思ったより時間かかっちゃったね。さあ、いこうか」
…行くの?ほんとに?
アルバートはニコニコと歩き出すと、エントランスホールを出ていく。カオルも不安ながらにあとを追った。
この世界に来たときに二人が倒れていた、あの道へと向かう。宮殿からそう遠くはないので、すぐに着くだろう。街は昨日より少し時間が遅かったためか、より多くの人々で溢れていた。
見上げると、今日もきれいな晴れ。なんとなく青空を見ていると、紅い鳥が真っ直ぐに、二人が歩く方向と同じ方へ飛んでいくのが見えた。
そして気づけば、人混みの中にアルバートを見失っていた。
「あれ…アルバート?」
辺りを探すが、あの怪しい頭は見つからない。
「アルバート…アルバート!」
聞こえるのは、街の人々の活気に満ちた声だけだった。
そのとき。
「わっ…!」
どん、と肩に衝撃が走り、よろついて手がゆるんだ。瞬間、鞄を奪われていた。