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アルカナの抄 時の掟

第2章 「愚者」逆位置

結論から言うと、最初の場所に行ってみたものの、もとの世界へ戻る手がかりは、何も見つからなかった。そのまま宮殿へ戻り、食事、風呂、などなど…を済ませ、次の朝を迎えていた。ヴェキの作法講座を終え、ベッドに倒れ込む。

「はぁああ…」

盛大なため息をついたところへ、突然扉が開いた。

「わあっ」

「カオル、運動しよう」
アルバートが、ラケットのようなものを2つ抱えて言った。

「そんな気分じゃな…」

「こっち。中庭ねっ」

強引に手を引かれ、カオルは中庭に連れてこられた。いつのまにか手にはラケットを握りしめている。

あれ。デジャヴだ…。

そんなことを考えつつ、カオルは飛んでくるバドミントンの羽根のようなものを打ち返していた。

「カオル、初めてなのにうまいねー」

「こっちの世界にも似たようなのがあったからね。アクシデントさえなければ、私はバドミントン大会で学年14位の地位を得ていたはずなの!」

「それってすごいのー?…あ」
アルバートがラケットを振り真上にうち上がった羽根が、頭の上に乗った。

「あはは!」
指をさして笑った。アルバートがもう一度羽根を飛ばす。カオルがすかさず拾い、アルバートもさらに打ち返す。

「見てなさい!必殺・アクシデンタルラッキーショットォオ!!!!」
カオルが思い切りラケットを振ると、衝撃とともに羽根がものすごい速さで飛んでいった。

まっすぐ、まっすぐに羽根は飛んでいき、羽根はアルバートの向かって左手、アルバートから見て右側に落下していく。アルバートからは離れており、カオルは勝利を確信する。

しかし、いつのまにだろう、すぐ近くにラケットがあった。そして落下の瞬間、羽根は拾われる。

…やるじゃん。私のスーパーショットを返すとは…。

「って…」
打ち返された羽根が、まっすぐにカオルに向かってくる。…顔めがけて。

「うぇえええ」
直後、カオルの額に衝撃が走る。

ぎゃあああ、と断末魔の叫びが響き、カオルが倒れた。

「カオル!!!」

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