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アルカナの抄 時の掟

第2章 「愚者」逆位置

部屋を出て、宮殿内をぶらつく。たいていのところは一度ヴェキに案内され見たのだが、何しろ広い。改めて見てまわると、こんなところもあったっけか、と発見する。一階へ降り、謁見の間とは逆の方へ、奥へ奥へと進んでいく。

と、離れへの渡り廊下がある。行ってもいいのかな、と迷っていると、近くで誰かの声が聞こえる。ぼそぼそとしゃべっており、少々聞き取りづらいが、耳をそばだてる。


「女ならばご心配には及ばないのでは?」

「私もはじめはそう思っていたんだがな。…別の可能性が出てきた」

「……?それはどのような」

「拾ったのがただの気まぐれだとしてもだ。あのアホ皇帝がそのうち女を気に入って、召し上げるということも考えられる」

「なるほど。ご息女様の件ですか。ご懸念されているのは」

「左様」

「バカ皇帝ならなきにしもあらず、ですか。早くことを急がなければなりませんな」

「そういうことだ…」


カオルはどきりとする。今の会話――渦中の人物は、どう考えても自分だ。

アルバートと私がどうこうなるかもって言ってる…?ないない!

他にも何かいろいろ聞こえた気がしたが、聞きたいのをこらえてそっとそこを離れると、自室に戻った。もとと変わらぬ部屋がそこにあった。

いつも通り食事や風呂を済ませ、そのままベッドに入る。
もう一度メールを読み返したくなったが、充電がなくなるといけなかったので、そのまま眠りについた。

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