テキストサイズ

アルカナの抄 時の掟

第2章 「愚者」逆位置

そ、そんなに驚かなくても…。そんなに童顔かなあ。

「カオルさんは…陛下とお友だちなのよね」

「うん、そうみたい」

「…それだけ?」

「は?」

「お友だちより上ではないの?」

「…恋人かってこと?」

セレナはコクリとうなずいた。

「まっさかあ。友だちかどうかすらあやしいのに」

「本当に?ただのお友だち?」

「うん」

「そう…」
セレナは押し黙る。と、やがて再び口を開いた。

「わたくし…陛下をお慕いしているの」

「えっ!?」
お茶を吹き出しそうになり、あわててカップを口から離す。

あの変人を…?

「…どこを好きになったの?」
愕然として聞くと、セレナは頬を染めた。

「陛下は…本当はすごくお優しいかたなの」
セレナはアルバートとのなれそめや惹かれるようになったきっかけを延々と語ると、やがて言いにくそうに続けた。

「それで、あの…カオルさん」

「ん?」

「もしよかったら、…協力してほしいの」
なにに、という顔をすると、セレナは続けた。

「陛下と…仲良くなりたいの。というか、実はそのためにカオルさんとお友だちになったの」
セレナはもじもじと言った。

…最後のはぶっちゃけなくてよかった気がするんだけどね…。

セレナの顔は、恋する乙女そのものだった。いつもならその性質から断っていた――むしろ干渉しないことがカオルなりの気づかいなのだが――なんとなく、こちらの世界で初めてできた同姓の友人のために、なにかしてみたい気持ちになった。

「…いいよ、協力する。できることはなんでもするよ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ