テキストサイズ

アルカナの抄 時の掟

第3章 「女帝」正位置

今日は、アルバートがカオルを自分の私室へ招いた。何度目かの「お茶しよう」だった。その多くはバルコニーで、アルバートの私室へ入るのは初めてだった。

…バカみたいに広い。

「ベッドにでも座って」

「え?そっちのソファーはだめなの?」
ベッドの隣のソファーを指差す。他人のベッドに近づくのはなんだかはばかられた。

「ベッドはそこだよ」
カオルがベッドの脇でもたもたしていると、アルバートが言った。

いやわかるけど!

仕方なく、カオルはベッドに腰かけた。アルバートも、ベッド横のサイドテーブルにお茶を置くと、カオルの横に座る。

「このお菓子おいしいんだよ~。この前いっぱい買って、ヴェキに怒られちゃった。ヴェキってばほんとケチ」

「どれくらい買ったの?」

「んー。そのとき持ってたお金で買えるだけ、かな。一人じゃ持ちきれなかったから、あとで届けてもらったんだけど…そしたら見つかっちゃった」

「持てないほど買うって…そりゃ怒られるよ」

っていうか、そんなに買えるほどのお金を常に持ち歩いてるのね…。ひとつでも結構な値段しそうだけど。

「そうかなー」
アルバートがベットに寝転がり、目を閉じる。


ひとしきり他愛もない話をしてそこそこに盛り上がると、一瞬、二人の間に穏やかな静寂が訪れた。ゆっくりとした時の流れを感じる。アルバートは、寝てしまったのだろうか。カオルがふいに口を開いた。

「なんとなくだけどさ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ