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アルカナの抄 時の掟

第3章 「女帝」正位置

「待たせたね」

「あ、おかえり」
立ったまま言う。

「カオル」
ニコニコと、カオルの両手をとった。

「ん」

「結婚しよっか」
いつものニコニコ顔で言った。

「……え?」

「結婚」

「だれと?だれが?」

「カオルと僕が」

「じょ…冗談はおよしになって」

「本気だよー」

「いやいやいや」
カオルは目を背ける。

なにを言い出すんだねこのひとは。

「ね」

「そんないきなり言われても…」
そう言って振り払おうとすると、さらに強くつかまれた。それにより、カオルはわずかにバランスを崩す。
足を後ろへ引いたが、ベッドのシーツを踏んでしまい、ずるりと滑った。

「わっ…!」

――とっさにアルバートの手を握り返す――アルバートの手が引っ張られる――それによりふらついたアルバートの足の一方を、滑っていくカオルの足が引っかける――そのままの勢いで、ベッドへ二人とも倒れ込む。

アルバートはとっさに手と片足をついたが、カオルの手をつかんだままだった。端から見ると、アルバートがカオルを押し倒したかのような体勢になっていた。

「う……」
気まずさに、カオルが声を漏らす。
と、アルバートがカオルのくちもとをぺろりとなめた。

「なっなにすんの」

「あれ…つい」

「つい、じゃないでしょっ」

「カオル、結婚しよう」

「さっき聞いた」

「3日後でいいかな」

「やだ」

「衣装用意しないと」
みんなには当日まで内緒ね、と言うと、アルバートは風のように去っていった。

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