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アルカナの抄 時の掟

第3章 「女帝」正位置

そして、気づいたらその3日後になっていた。というか気づいたらアルバートの腕のなかで揺られていた。

「……え?」

朝目が覚めたら、アルバートに、いわゆるお姫様だっこをされていたのだ。しかも、見るとなんだかアルバートは、見慣れない服を着ている…。

「あ、おはよう~。カオル、似合ってるよ。きれい」
アルバートは走りながらそう言った。カオルは自分の姿を見る。と、ドレスを着ていた。

「いつの間に!」
うっすらと化粧もしてある。

「もうすぐだよ」

なにが!

まったくわけのわからない、いやわかりたくないカオルは、ただ呆然と揺られていた。



そして、教会のようなところへたどり着く。どうでもいいが、カオルはここの世界観がよくわからなくなってきていた。

二人が中へ入ると、重臣たちや宮殿の者たちが集まっていた。

「みんなお待たせ。僕たち、結婚します!」
そう言うと、アルバートはカオルを降ろした。

なにも知らされていなかった重臣たちがどよめく中、式は進められた。

…いや、私もどよめきたいんだけど…。

神父のような初老の男性が、重々しく口を開く。

「あなたは、病めるときも――」

「ぜんぶ誓います!」
アルバートの声が響いた。

「ね、カオル」
と、有無を言わせない笑顔を向けると、アルバートはカオルに口づけた。

「んんー!」

な、長い!

「んはあっ」
やっと離されたカオルが、はあはあ、と息を整える。

「愛してるよ、カオル」
すらりと立ち、まっすぐにこちらを見て微笑むアルバート。ステンドグラスから差し込む光が、その姿を照らしていた。

くそう。なんかかっこいい。

「むかつく!」

「ええー」

こうして、二人は結婚してしまった。

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