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アルカナの抄 時の掟

第3章 「女帝」正位置

なんだかんだで流されて結婚式が終わってしまったあと、アルバートが言った。

「カオル、あの部屋は出てね」

「えっなんで?」

「カオルは今日から僕と一緒の部屋だよ」

「だからなんで」

「夫婦なんだから同じ部屋で過ごすのは当たり前でしょ?」

「えええ」

「ベッドも一緒」

「いやそれはさすがに!」
無理、と言おうとしたが、確かに以前部屋に入ったとき、ベッドはひとつしかなかったことを思い出す。

部屋移ったら必然的にそうなるか…。

「じゃあ、着替えたら荷物持ってきてね」




またもや押しきられたカオルは、すごすごと自分の鞄や借りている衣服をアルバートの私室へ移動させた。それからというもの、アルバートはカオルにべったりだった。

なんとか抜け出そうと、カオルは入浴を口実に部屋を出てきた。

結婚…してしまった…。17にして…。

「漢字二文字の苗字の人と結婚して、非一般Peopleへの終止符を打つ予定だったのに!」

湯につかりながら、トホホ、とうなだれた。まだ実感はないが、部屋、それだけでなくベッドが一緒という事実に少なからず危機感を持つ。

と、バスルームの戸が開いた。

「湯かげんどう~?」
アルバートだった。真っ裸の。

「わああっ!なにナチュラルに入ってきてんの!」

「別におかしいことじゃないよ。夫婦なんだから」
そう言って湯船に入ってくるアルバートは、タオルすら身につけていなかった。

「ちょ、ちょっと!せめて下半身は隠してよ」

「そのうち慣れるよ」
アルバートはカオルに近づくと、横から抱きよせた。

「カオル。愛してる」

…びっくりするくらいベタベタだ。もっと近くにおいで、と言うアルバートに、どうしたもんかと考えあぐねていると、アルバートは座ったままカオルを引き寄せ、自分の上に重なるように座らせた。

「ちょ…!」

なにかおしりにあたってるんだけど…。

戸惑うカオルを、アルバートが後ろから抱きしめる。

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