
アルカナの抄 時の掟
第3章 「女帝」正位置
「…暑苦しい」
ノートに書き込みながら、カオルが言った。
「もう我慢しなくていいんだもんね~」
後ろからカオルの腰元を抱え込みながら、頬擦りする。
「…陛下。彼女はもう客人ではありません。皇妃です。様々な知識を身につけることは、職務でもあります」
ヴェキがきびきびと言った。
アルバートは、カオルがヴェキの講座を受けている間もカオルから離れず、べったりだったのだ。
「…わかったよ~」
アルバートは素直に出ていった。
「あなたも今まで以上に身を引き締めて学んでください。これは義務です。あなたは皇帝陛下の妻、皇妃なのですから」
「…はい」
精進します、と言うと、カオルは筆を進めた。
これまでは最低限の礼儀や作法を中心に学んできたが、今日からは皇妃として知るべき知識である、この国の歴史や文化を本格的に教えられることになった。
礼儀や作法を学ぶときに、自国との文化の違いはなんとなく理解していたのだが、改めてきちんと学び直すのだ。
「レイミエ帝国…」
この国の名前すら、カオルはこのときまで知らなかった。招かれた一客人ならまだともかくも、皇妃が国名を知らないともなれば一大事だ。
この国の成り立ちについて語るヴェキの言葉を、カオルは必死にノートに書き取っていた。
「――ですから、先代はおりません。陛下お一人でこの国を治められています」
なんと、アルバートは初代皇帝だった。それゆえ、アルバートのこの国での力は強大だった。普段、ヴェキなどは気兼ねなく意見を言っているように見えるが、それは彼の性格や立場によるものだ。ヴェキを信頼しているからこそ、アルバートもそれを許しているのだ。彼以外に、怖じけることなく皇帝にもの申す者はいない。
アルバートは好き放題やっているが、それは会議での彼の言葉が絶対的であるがゆえだった。ヴェキも、そのような場ではあまり口出ししない。
重臣たちは、そんな皇帝の様子に頭を抱えていた。
ノートに書き込みながら、カオルが言った。
「もう我慢しなくていいんだもんね~」
後ろからカオルの腰元を抱え込みながら、頬擦りする。
「…陛下。彼女はもう客人ではありません。皇妃です。様々な知識を身につけることは、職務でもあります」
ヴェキがきびきびと言った。
アルバートは、カオルがヴェキの講座を受けている間もカオルから離れず、べったりだったのだ。
「…わかったよ~」
アルバートは素直に出ていった。
「あなたも今まで以上に身を引き締めて学んでください。これは義務です。あなたは皇帝陛下の妻、皇妃なのですから」
「…はい」
精進します、と言うと、カオルは筆を進めた。
これまでは最低限の礼儀や作法を中心に学んできたが、今日からは皇妃として知るべき知識である、この国の歴史や文化を本格的に教えられることになった。
礼儀や作法を学ぶときに、自国との文化の違いはなんとなく理解していたのだが、改めてきちんと学び直すのだ。
「レイミエ帝国…」
この国の名前すら、カオルはこのときまで知らなかった。招かれた一客人ならまだともかくも、皇妃が国名を知らないともなれば一大事だ。
この国の成り立ちについて語るヴェキの言葉を、カオルは必死にノートに書き取っていた。
「――ですから、先代はおりません。陛下お一人でこの国を治められています」
なんと、アルバートは初代皇帝だった。それゆえ、アルバートのこの国での力は強大だった。普段、ヴェキなどは気兼ねなく意見を言っているように見えるが、それは彼の性格や立場によるものだ。ヴェキを信頼しているからこそ、アルバートもそれを許しているのだ。彼以外に、怖じけることなく皇帝にもの申す者はいない。
アルバートは好き放題やっているが、それは会議での彼の言葉が絶対的であるがゆえだった。ヴェキも、そのような場ではあまり口出ししない。
重臣たちは、そんな皇帝の様子に頭を抱えていた。
