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アルカナの抄 時の掟

第3章 「女帝」正位置

「歴史も重要ですが、それよりもまず…皇妃であるあなたは、今の宮殿内の情勢を知っておく必要があるでしょう」

「情勢、って?」

「政治勢力、要するに、政治的な人間関係です。現在宮殿で幅を利かせている人物は誰か、誰が誰の発言に逆らえないか、などです」

なんか難しい話になってきたな…。

「現在宮殿内には二つの勢力があります。左大臣の一派と、右大臣の一派です。重臣たちは一部を除いて必ず、この派閥のどちらかに属しています」

「ヴェキさんはどっち?」

「…左大臣派です。元部下ですから。…まあ今も部下みたいなものですが」

「ふうん」

「この各派閥のトップは言わずもがな力を持っています。このツートップが対立している原因の一つは、この国の成立前から伝わるある伝承です」

「伝承?」

「この国には霊鳥とされる生き物がいます。その姿をこの宮殿内のあらゆる場所で見かけたことがあるでしょう」

「ああ、あの赤い鳥ですね」

「謁見の間の装飾箱の蓋や、エントランスにもタぺストリーが飾ってありますね」

「実際にも見ましたよ、何回か」

「……は?」

「空飛んでました」

ヴェキは静かにカオルをじっと見ると、再び口を開いた。

「…我が国では、霊鳥は国を守護しているとされています。隣国があまり好戦的でなかったということもありますが、この国は建国してから一度も他国に攻められたことはありません。まあ、建国からそれほど経っていないというのが大きいですが」

「それが野望と関係あるんですか?」

「その霊鳥が、この地方の統治者に力を与えるとされているのです。また、最高権力者だけでなく、それを支える者にも与えられると。支える者、というのが何を指すのか、諸説ありますが、現在の通説はその妻…つまり、皇妃であるあなたです」

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