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アルカナの抄 時の掟

第3章 「女帝」正位置

「はあ…」
…よくわかんないや。なにか変わった気もしないしなぁ。

「左大臣たちの争いの種の一つは消えました。あなたが陛下の正室の座につくことによって」

「ってことはまだなにか争ってるんですか?」

「まだまだ方法はありますから。あらゆることで両派はいがみ合っています」

「なんでそんなに仲悪いんですか?」

「…対立の直因は、まぁ、両者が馬があわなかったことですね。というかほぼ左大臣が原因です。その原因というのも呆れるほど大したことないので聞かない方が賢明ですよ」

「へ、へえ…」

「この対立というのも、初めは右大臣が一方的に対抗していただけだったのですが。左大臣も面白がって挑戦を受けるものですから…アホなんですあの人」

「は…はあ…」

アホって…。

「…とにかく、あなたはあなたの職務をこなしてください。まず、健康でいること、知識を身につけること。そして、陛下を支えてください」

「はい…」

「これまでのような迂闊な行動は控えてくださいよ。これからは立場をわきまえて、自由気ままに宮殿内をうろちょろするようなことはやめてください。どこかに行くときは必ず誰かを同伴させること。一人で宮殿を出るなどはもってのほかです」

「う…。はい」

「では、今日のところはこれで終わりです」

いつもより倍以上長いヴェキの講座は、やっと終了した。アルバートが戻ってくる気配はない。

「ヴェキさん」
ふと、立ち上がろうとしたヴェキを呼び止めた。

「なんですか」

「アルバートのこと…どう思う?」

「…そんな趣味はありません」

「違いますっ!そうじゃなくて、アルバートって…なんかつかめないっていうか、」


「…なんだか、わざとちゃらんぽらんに振る舞ってるみたい」
カオルは、探るようにヴェキを見た。


「あなたにそう見えたのなら、そうなのかもしれませんね」
ヴェキらしくない返答だった。肯定、なのだろうか。

…アルバートは、なにを考えてるんだろう。

カオルが無言でいると、では、とヴェキは部屋を出ていった。

アルバートは…いつも自分を“作ってる”気がするんだ。何のためかわからないけど…私は。


私は、本当の彼を知りたい。

今すぐじゃなくていい、少しずつ…アルバートの本当の姿を見せてもらえる――本音を言ってもらえる存在になりたい。

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