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アルカナの抄 時の掟

第4章 「塔」正位置

当日、大広間へ行くと、大がかりな飾りつけと、並べられたテーブルの多さ、何より、部屋の広さに驚く。これなら全員入るのも納得、というほど広かった。

…こんなに大きなグラスタワー、初めて見たかも。

大広間は、この宮殿では珍しく、きらびやかに装飾されていた。元々このような祝い事のための空間なのかもしれない。
見渡すと、内装に負けないくらいに人々が輝いていた。

「皆きれいだなぁ」

ここにいる誰もが華やかなドレスに身を包み、化粧をして着飾っていた。カオルも、今回は自分でメイクして、シックなドレスを着ている。それに合わせて、少し高めのヒールも履いていた。

…このドレス、私には似合わない気がする。

大人っぽいマーメイド型ドレスの裾をつまみ、今からでも換えてもらおうかと考えていると、聞き覚えのある声が降ってきた。

「こちらです、皇妃」

ヴェキだった。部屋の奥へと案内され、ついていくと、アルバートが立っていた。

「あっ。迎えにいくから部屋で待っててって言ったのに~」

「思ったより早く終わったから待ちきれなくて」

アルバートがじっと、カオルから目を離さない。

「…カオル、きれい」
笑顔で言った。

…そんなにはっきり言われると照れる。はっきりじゃなくても照れるけど。

「ありがと…」

と、音楽が始まった。階段状になった舞台の両脇に、演奏家たちがずらりと並び、華やかで美しい旋律を奏でていた。

アルバートがカオルの手をとり、舞台へと上がっていく。舞台は結構高く、大広間に集まるたくさんの人の顔が見えた。

セレナさんもいるかな。

そう思ったところで、はっとした。そうだった。彼女に協力すると言いながら…自分の意思に関係なくとは言え、彼女が思いをよせている相手と、結婚してしまったのだ。

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