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アルカナの抄 時の掟

第4章 「塔」正位置

そう思うと、ひどい罪悪感に襲われた。友人の想い人を奪ってしまった。そのことがぐるぐると頭をめぐる。

「カオル」
壇上へ上がると、アルバートが名を呼んだ。カオルが顔をあげる。アルバートが微笑んでいた。

やがて、アルバートが大広間全体に告げる。

「皆、今日は集まってくれてありがとう。改めて紹介するよ、彼女が僕の妻、皇妃となったカオル。彼女と一緒になれて本当に嬉しいよ。どうか皆も、僕たち二人を祝ってほしい」

言い終え、アルバートがカオルに向き直る。優しい瞳が、カオルへと向けられた。

「愛してるよ、カオル」

唇が重なり、カオルも瞳を閉じて預けた。集まった者たちからは歓声が上がり、祝福の声が飛び交った。

だが、セレナの赤らめた顔がちらりと脳裏をよぎる。

一瞬の迷いが心をかすめ、わずかな拒絶となってあらわれた。それは、周りは気づかないほどのほんの少しのものだった。

わずかに早く、自ら離したのだ。アルバートの顔が見れなくて、目線を落とす。アルバートには伝わっただろうか…。


今までとは違う、本当の拒絶。


ちらりとアルバートを盗み見ると、まっすぐにこちらを見ていた。

「カオル、美味しい料理たくさん食べよう」
いつもと変わらない笑顔でそう言うアルバート。

「…うん」

手を引かれ、舞台を降りていく。と、足に衝撃が走った。

「あっ…」

ぐらりと揺れる視界。バランスを取ろうとすればするほど大きく体勢を崩し、横に傾く。

アルバートがとっさに抱きとめる。が、わずかに足を踏み外し、共に転がり落ちた。

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