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アルカナの抄 時の掟

第4章 「塔」正位置

月はまだこちらを見ていた。カオルも見つめ返す。思い浮かぶのは、打ち明けてくれたときの、彼女の恥じらった顔。友人の顔だった。

一度ふっきれたつもりでいたが、やはりセレナのことを気にしてしまっていた。

「考えても仕方ないか」

セレナもいいって言ってくれたし。…ここまできたらもう、どうにもなんないし。

そう考えると、気持ちが楽になってきた。

よーし、復活!!

ふう、と短く息をつくと、カオルはきびすを返した。





翌日の晩。今度はカオルではなく、アルバートが目を覚ました。窓の外に顔を向ける。外は真っ暗だった。しばらく眺めると、再び目を閉じた。

直前に、何か黒い影が目に入った気がして再び目を開ける。

黒衣に身を包み、フードを被った者が、カオルに向けて刃を振りかぶっていた。

アルバートはそっとソファーの下に手を伸ばす。

刃が振り下ろされた瞬間、アルバートは鞘に納まったままの剣をあてがった。振り下ろす勢いが勢いだったため、鞘のままとはいえ、凄まじい衝撃音が響いた。

カオルを庇うように、アルバートが剣を突き出していた。カオルが目を覚ますのと、相手がびくりとし、振り向くのはほぼ同時だった。アルバートがすかさず体当たりをする。

よろけた相手に、アルバートが鞘を抜き、飛びかかった。相手も体勢を立て直し、応戦する。

「えっ…」
刃を交わらせるアルバートたちを見て、カオルは一気に目が覚めた。

「なに!?なにやってんのっ!?」

と、アルバートが相手の剣を大きく振り払い、相手のフードに手を伸ばした。パサリ、と長い髪が揺れた。相手は仮面をしており、まだ顔は見えなかった。

すぐに手を伸ばすが、その腕にぐさりと剣が刺さった。

「うあっ…!!」
アルバートが苦しげに顔を歪めた。だが、それでも手を止めない。相手が驚いている隙に、その仮面を取り払った。


それは、見覚えのある顔だった。

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