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アルカナの抄 時の掟

第4章 「塔」正位置

セレナは、無表情で、だが冷めた目でこちらを見ていた。

「なんで…?」
カオルは驚愕の目でセレナを見つめた。絶望、も入り交じっていたかもしれない。

「私が、裏切ったから?」
言いながら、自分の心にぐさりとくる。

「…違うわ」
セレナは諦めたように腕を下ろし、口を開いた。

「…あなたのこと、大嫌いだったの。最初から」
見たこともないような憎悪の表情だった。

「あなたのことを知れば知るほど、嫌いになった。…死んでほしいくらいに」

「なんで…」

「あなたのなにもかもが嫌いなの。理由なんてないわ」

「友だち、だと…思ってたのに…」

「友だちなら都合が良いと思ったけれど。あなたってなかなか一人にならないんだもの、手こずったわ。仕方ないから夜更けを狙ったのに」

「そんな…」

こうなるとはね、とセレナが目を伏した瞬間、アルバートがセレナの口に手を突っ込み、押し倒した。

「ちょっ…!こんなときになにやってんのよ…っ!!」
カオルが駆け寄る。アルバートは、セレナの口の中をまさぐっている。

「んぐっ…!」
セレナが抵抗し、暴れる。

と、アルバートが手を抜き、ぽい、と何かを放り投げた。

「なっ…なに…?」

「…毒だよ」

奥歯に毒が仕込んであったようだ。セレナが噛もうとしたのに、アルバートはいち早く気づいたのだった。

「ど…っ!」

毒…!!

「…死なせてもくれないのね」
ふ、とセレナが笑う。


と、セレナが目を見開く。アルバートが、セレナのみぞおちに拳を沈ませていた。セレナはゆっくりと目を閉じ、やがてがくりとうなだれた。

最後に、ちら、とアルバートの傷を見ていた気がした。

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