
アルカナの抄 時の掟
第4章 「塔」正位置
こんなにもまっすぐに憎しみの感情をぶつけられたのは、カオルには初めてのことだった。気を失ったセレナを見る。…ズキリと胸が痛んだ。
だが、そんな場合ではない。アルバートが腕から血を流しているのを見て慌ててハンカチを取り出し、簡単な応急手当てをした。
するとどこから取り出したのか、アルバートは縄でセレナの腕を縛ると、ヴェキを呼んだ。
「牢に入れておきましょう」
皇帝はもちろん、皇妃を襲ったとなると、未遂でも大罪だ。死罪は免れない。セレナは、牢でただ死を待つ身となった。
「うん」
アルバートは、ただそれだけ言った。ヴェキがさらに人を呼び、セレナは運ばれていった。
「アルバート…」
傷は大丈夫なの、と言おうとして絶句する。アルバートを見ると、ひどい顔色で、滝のように汗をかいていた。
ぐらり、とアルバートが身を崩した。
「アルバート!?」
とっさに支えるが、支えきれず、二人は倒れ込む。
「陛下!」
ヴェキも異変に気づき、駆け寄る。
「…やられました」
どうやら、セレナの剣には、毒が塗られていたらしい。人を呼んで早急にベッドへと運び、解毒剤を飲ませる。それでも、アルバートは危険な状態だった。
「アルバート…!」
カオルは、ベッドに横たわるアルバートの苦しげな姿に、悲痛に顔を歪めた。
ぜえぜえ、とアルバートの荒い呼吸が聞こえる。
「…しばらく安静にする必要があるでしょう」
ヴェキが冷静に言った。そして、カオルたちは半ば追い出される形で、部屋を出た。
「この国の薬師は優秀です。最善は尽くしたのですから、あとは陛下ご自身のお力に任せるほかありません」
では私はこれで、とヴェキは去っていった。
「どうしよう…私のせいで」
カオルは鞄を持ち、以前使っていた部屋へと向かった。
だが、そんな場合ではない。アルバートが腕から血を流しているのを見て慌ててハンカチを取り出し、簡単な応急手当てをした。
するとどこから取り出したのか、アルバートは縄でセレナの腕を縛ると、ヴェキを呼んだ。
「牢に入れておきましょう」
皇帝はもちろん、皇妃を襲ったとなると、未遂でも大罪だ。死罪は免れない。セレナは、牢でただ死を待つ身となった。
「うん」
アルバートは、ただそれだけ言った。ヴェキがさらに人を呼び、セレナは運ばれていった。
「アルバート…」
傷は大丈夫なの、と言おうとして絶句する。アルバートを見ると、ひどい顔色で、滝のように汗をかいていた。
ぐらり、とアルバートが身を崩した。
「アルバート!?」
とっさに支えるが、支えきれず、二人は倒れ込む。
「陛下!」
ヴェキも異変に気づき、駆け寄る。
「…やられました」
どうやら、セレナの剣には、毒が塗られていたらしい。人を呼んで早急にベッドへと運び、解毒剤を飲ませる。それでも、アルバートは危険な状態だった。
「アルバート…!」
カオルは、ベッドに横たわるアルバートの苦しげな姿に、悲痛に顔を歪めた。
ぜえぜえ、とアルバートの荒い呼吸が聞こえる。
「…しばらく安静にする必要があるでしょう」
ヴェキが冷静に言った。そして、カオルたちは半ば追い出される形で、部屋を出た。
「この国の薬師は優秀です。最善は尽くしたのですから、あとは陛下ご自身のお力に任せるほかありません」
では私はこれで、とヴェキは去っていった。
「どうしよう…私のせいで」
カオルは鞄を持ち、以前使っていた部屋へと向かった。
