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アルカナの抄 時の掟

第4章 「塔」正位置

「それは、ダイナス様が判断されることではありません」
ヴェキがきっぱりと言い放った。

皇帝不在では、重要なことは何も決められない。皇帝が復帰するまで、今後どうするか、暫定的な決定を行うだけだ。

「何かあればその都度また集まればいいんじゃないかの~」
左大臣が言った。やっとしゃべった。のー、と言っているが、おん年は右大臣と同じく40前後だ。

ヴェキを含む左大臣派は異存はないようだった。右大臣派の連中も、無言だということは、まあそれでいいという意味なのだろう。

「ではそうしましょう」

この場で最も地位の高い人物の鶴の一声で、話し合いは終了、一同は解散した。





一方、カオルは、目を覚ますとすぐに部屋を出た。アルバートのもとへ向かうと、薬師の助手が、どーん、と入り口で構えていた。

「アルバートは…?」

「今はまだなんとも」

「昨日もそんな感じのこと言ってた」

「今は安静にしておくことが第一です」

「それも昨日聞いた!」

カオルがわめいていると、後ろから声が降ってきた。

「なにをしてるんです」

振り向くと、そこにはヴェキが立っていた。召集からの帰りに、アルバートの部屋に立ち寄ったのだ。

「アルバートの様子が見たいんです!」

「だめです」
間髪を入れずにヴェキが言った。

「なんでですか」
不満げな声をもらす。

「まだだめです。こちらへいらしてください」
ヴェキが、カオルの腕をつかんだ。

「離してっ」

ぱっ、とヴェキが手を離す。その拍子にカオルがふらついた。

「なんなんですか」

「あなたは皇妃です」
ビシリと言った。

「あなたにはすべきことがあります」

「なにそれ。そんなことよりも…今はアルバートの容態の方が大事よ!」

「いい加減にしてください」

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