
アルカナの抄 時の掟
第5章 「皇帝」正位置
数日が経ち、アルバートの体調はかなり回復していた。それでも、カオルはアルバートの側を片時も離れなかった。
結界の圧力も、強さを取り戻しているようだった。黒龍の姿は消えていた。
そんな中、アルバートは王の間に重臣たちを徴集した。もちろんカオルも共にいた。
「――セレナ・リーンは、なにかしゃべったか?」
「それが…尋問を続けておりますが、口を堅く閉ざしております。…明日より、鞭打ちを行う予定です」
重臣の一人が答えた。
鞭打ち…。拷問ってこと…?
リーンの身分が高位な方だったため、拷問は遠慮されていた。アルバートも、できることならしたくはなかった。しかしセレナは、誰の指図により皇妃の首を狙ったのか、背後にいる人物についてまったく口を割ろうとしなかった。
「…そうか。わかった」
アルバートは目を伏せた。
セレナが右大臣との繋がりを吐けば、右大臣に嫌疑がかけられる。すぐにでも身柄を拘束することになるだろう。
…だが、なぜそこまで庇う…?それほどまでに多大な恩義が、右大臣にあるのか…?
アルバートにはもう一つ、引っかかっていることがあった。それをずっと考えているのだが、未だに答えは見つからない。
…併せて、調べさせよう。
アルバートはヴェキを近くに呼んだ。周りに聞こえないように、ぼそぼそとなにか耳打ちすると、わかりました、とヴェキが言った。
何事もなかったかのように、アルバートが再び臣下たちを見る。
「国境付近の様子を探らせよ。また、兵も配備する」
アルバートがてきぱきと指示をする。もう、以前のように自らを誤魔化すことは、しないし、できない。
カオルは、アルバートの的確な指揮ぶりに驚きながら、そのキリリとした横顔を眺めていた。
結界の圧力も、強さを取り戻しているようだった。黒龍の姿は消えていた。
そんな中、アルバートは王の間に重臣たちを徴集した。もちろんカオルも共にいた。
「――セレナ・リーンは、なにかしゃべったか?」
「それが…尋問を続けておりますが、口を堅く閉ざしております。…明日より、鞭打ちを行う予定です」
重臣の一人が答えた。
鞭打ち…。拷問ってこと…?
リーンの身分が高位な方だったため、拷問は遠慮されていた。アルバートも、できることならしたくはなかった。しかしセレナは、誰の指図により皇妃の首を狙ったのか、背後にいる人物についてまったく口を割ろうとしなかった。
「…そうか。わかった」
アルバートは目を伏せた。
セレナが右大臣との繋がりを吐けば、右大臣に嫌疑がかけられる。すぐにでも身柄を拘束することになるだろう。
…だが、なぜそこまで庇う…?それほどまでに多大な恩義が、右大臣にあるのか…?
アルバートにはもう一つ、引っかかっていることがあった。それをずっと考えているのだが、未だに答えは見つからない。
…併せて、調べさせよう。
アルバートはヴェキを近くに呼んだ。周りに聞こえないように、ぼそぼそとなにか耳打ちすると、わかりました、とヴェキが言った。
何事もなかったかのように、アルバートが再び臣下たちを見る。
「国境付近の様子を探らせよ。また、兵も配備する」
アルバートがてきぱきと指示をする。もう、以前のように自らを誤魔化すことは、しないし、できない。
カオルは、アルバートの的確な指揮ぶりに驚きながら、そのキリリとした横顔を眺めていた。
