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アルカナの抄 時の掟

第5章 「皇帝」正位置

私もしっかりしなくちゃなあ…って、あれ?

カオルがぽーっと眺めていると、集められた者たちが次々と出ていき始めた。会議が終わったのだ。

…しまった。しっかりしなきゃって思ったばっかりなのに。


「カオル。…悪いんだけど、今からちょっとヴェキと話すことがあるから、先に部屋に戻っててくれる?」

「私が一緒じゃだめなの?」

「…ごめん。大事な話なんだ」

「わかった」
カオルは少し寂しく感じたが、仕方がない、と素直に受け入れた。

「なるべく早く戻るようにするよ」
カオルを気づかうように、アルバートがごめんね、と付け足した。

…あんなことがあったんだもん。いろいろやることあるよね、皇帝だし。

自分も一応皇妃なのだが、他人事のようにそんなことを思っていた。

カオルは王の間を出る。と、ちょうどフレアが通りかかったので声をかけてみた。

「あ、フレア!」

「あら、カオルさま」

「今時間ある?」

「そうですね…。ただ今、替えのシーツをお持ちするところでしたので…少々お待ち頂ければ」

「うん、じゃあ待ってるね!」





カオルは、皇帝を支える立場にありながら、ただ毎日をすごしているだけの自分に疑問を持ち始めていた。

皇帝らしくなったアルバートに対して、自分はまったく皇妃らしいことをしていない。本当にこれでいいのかと。
皇妃として何をすべきかをフレアに相談すると、答えは簡単だった。

「そのままでよろしいと思いますよ」

「そうかなぁ…。何の役にも立ってないし…」

「そんなことはありません。陛下のお側にいらっしゃるだけで、陛下のお気持ちはずいぶんと穏やかになっていることでしょう」

「うーん…」
何か行動したいカオルとしては、釈然としない。

「でもそうですね。敢えて申し上げるなら――」

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