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アルカナの抄 時の掟

第6章 「月」正位置

だが男の手が絡みつき、やはり逃れることはできない。男は温かい部分へと手を押し当てた。と、男は耳もとでゆっくりと、なにかささやいた。



“濡・れ・て・る・よ”


………!!

男は続けて、中指を立て、つつ、と溝をなぞった。

「あんんっ!」
なんとも言えぬ感覚に、背をのけ反らせる。

「皇妃さまって、実は結構淫乱?」
新しい玩具を見つけたかのように、ニヤニヤと言った。

胸の突起を弄りながら、指先を股に何度も滑らせる。カオルの甘い声が漏れる。

「んっ…んん」
もじもじと、脚を擦り合わせる。動かずにはいられないのだ。

「皇妃さま、欲求不満なの?皇帝陛下にあんまりかまってもらってないの?」
こんなので感じるなんて、と煽る。

中指と薬指を立て、パンツの上から突起を探す。やがて見つけると、爪を立て、軽く引っ掻いた。

「違、う…――あっ!」
びくり、と身体がわなないた。男はニヤリと口角を上げ、集中的にそこを攻め立てた。

「あっ…ん…ふ、あっ…ああ…」
もはや、声を抑えることもできなくなってきていた。あまりの快感に我を忘れてしまいそうになる。押し寄せる快感に、身を預けてしまいたくなる。


カオルはまったく気づいていなかった――付近に人影があったことに。浴場へ続く、女性用更衣室の扉をそっと閉め、アルバートはきびすを返す。その表情は、切なさをたたえていた。

のそのそと、廊下を歩く。なんとなく、いつもより薄暗く感じられた。宮殿の外へ出ると、まだそれほど暗くはなかったが、月が雲の間からうっすらと顔をのぞかせていた。

空を見上げ、ぼんやりと眺める。少し、風が冷たかった。

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