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アルカナの抄 時の掟

第6章 「月」正位置

ヴェキと別れ、夕食前に入浴へ向かう。昨日と同じ、専用の浴室だ。衣服を脱ぎ、湯に浸かると、ふと昨日のことを考える。

なんで、アルバートはあんなところにいたんだろ。

カオルは、臣下たちの住居の方から歩いてきたアルバートを不思議に思っていた。あんなところに用はないはずだが。…しかも、あんな時間に。

湯から上がり、寝間着に着替えると、廊下を歩いていく。なんとなく渡り廊下の前へ来ると、そう言えばフレアもここで見たんだっけ、と思い出す。

…まさか、ね。

考え事で長く浸かりすぎたのか、身体が火照って仕方がない。変な思考をぬぐい去るためにも、外へ出た。

また因縁をつけられてもいけないし、湯冷めしない程度にぶらぶらしよう。

パタパタと手で扇ぎながら歩く。辺りは真っ暗だった。外からはこっちの方へ行ったことないな、と思いながら、臣下の住居の方へふらふらと歩いていった。窓からこぼれる明かりをたよりに、植木との間を壁に沿って進んでいく。

ここに、何人くらいの臣下が暮らしているんだろう。見上げると、ちらほらと部屋に灯りがついている。

と、角に誰か立っているのが見えた。この暗さでは誰だかわからないが、ななめに背を向けているのはわかる。怪訝そうにカオルは目を凝らした。

どうも、もう一人横にいるらしい。…というよりも。

だんだん近づいていくと、二人が抱き合っていることがわかった。いや、それも違う。身体を密着させ、口づけを交わしていた。

他人のプライベートだと、頭では理解しつつも、カオルはさらに近づいた。好奇心を抑えきれなかった。

いったい、誰と誰が。

すると、背を向けていた人物がこちらに気づいた。顔の角度を変え、横目でこちらを見る。

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