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アルカナの抄 時の掟

第7章 「恋人」逆位置

暫くぼんやりと考えていると、いつの間にやら自身が目を閉じていたことに気づいた。はっとしてベッドを見る。…アルバートの姿はなかった。

うっそ…お茶でもいれてあげようと思ってたのに!

窓から強い光が差し込んでいる。思った以上に時間が経っていたようだ。

「アルバート…」
しょんぼりと、ため息混じりにその名を漏らすと、とぼとぼと食堂へ向かった。





食堂を出、部屋へと向かう。このとき、カオルは少しうつむきがちに歩いていたため、人の気配に気づいていなかった。ふいに背後から、ぬっ、と二つの腕が伸び、衣服の中へ滑り込んできた。誰かの手が、つつ、とカオルの腹部を滑る。

「っ!!…んあっ」
ゾクリとし、思わず声をあげる。

身体の線を確かめるように、腹部から胸へ、いやらしくその手は動いていく。くすぐったいような、もどかしいような、微妙な加減で、指にも動きをつけながら肌の上をつたう。

「ん…っ、やめな――」
カオルは振りほどくように一歩前へ出る。

「――さいっ!!」
ものすごい速さで振り向き、同時に強烈なビンタを相手に打ち込んだ。バシィン、と凄まじい音が響く。

「わお。アサシンもびっくりの身のこなし」
クリーンヒットおめでとう、男は頬をさすっている!

「やっぱりあのときの痴漢ね」
カオルは目の前に立つ美しい男を睨み付けて言った。

「また皇妃さまの最強ビンタ頂いちゃったなぁ」
男は、にや、と笑った。

「二度と近づかないでって言ったでしょ!」

「言われたね」

「じゃあ近づかないで」

「合意はしてない」
にっ、と男は言った。男の開き直りぶりに、カオルは唖然とする。

「あのねぇ。あんたのしたことわかってる?それこそ合意なしの犯罪でしょっ!」

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