テキストサイズ

アルカナの抄 時の掟

第7章 「恋人」逆位置

「外…?」

「…いえ、玄関ホール付近に。それまで外にいらっしゃったのかもしれませんし、これから出ようとされていたのかもしれません」

「それっていつ頃ですか?」

「つい先ほど。それほど経っていないと思います」

「じゃあまだその辺りにいるかも…。ありがとうございました、探してみます」
と、カオルが一歩踏み出したとき、扉がガチャリと開いた。

「…カオル?」
アルバートは、カオルがここにいることに、少し驚いている様子だった。振り向いたカオルも、アルバート以上に驚いていた。そこにいたのは、アルバートだけではなかったのだ。

アルバートの隣には、普段通りの穏やかな顔つきで、フレアが立っていた。

…なんで、フレアが。

穏やかで、優しくて、だけどどこかミステリアスな彼女。フレアは目が合うと、にこりと微笑んで会釈をした。

「…ちょうどよかった。カオルに大事な話があったんだ」
アルバートは低い声で言うと、部屋の中を示した。

なんだろ…話って。

カオルはこのとき、胸騒ぎがしていた。いや、胸騒ぎならこの前からずっとしていたが、これ以上ないくらいに心臓が早鐘を打っていた。

ヴェキとフレアが行こうとすると、アルバートが二人を引き留めた。部屋へ入ると、重い口調で口を開く。

「…カオル」
アルバートはまっすぐ、カオルを見つめていた。

なんだろう。先を聞くのが怖い。

と、ヴェキがハッとし、アルバートを見る。なにか口を開きかけたのを、アルバートが合図して制した。

「…暫く一緒に暮らせない」

「え……?」

どういうこと?

「少しの間、ヴェキのところにいてほしいんだ」

「な、なんで…」

「君のためだよ。詳しくは言えない」
アルバートは口をつぐむ。

「そんなの納得できない!理由を聞かせてよ」

「…言えないんだ、今は。ごめん」
アルバートは無表情に言った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ