無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

弓なりの海岸線に沿った、考えようによっては超高速コーナーとなる古いライダーにとって、
通過するたびに必ずちょっとした感傷にふけるこの場所。奴のエンジンがブローして、バイクごと海に投げ出された名所。

時間帯も目的も異なるが、今俺も、相当なスピードでこの海岸線沿いの高速道度を突っ走っている。

突っ走る理由は、本当は前に進むためじゃない。

逃げているだけだ。何から？目に見える相手は中国人。

ちょっと資金繰りに困ったときに久しぶりに顔を見たヤタベというと男が持ち込んだ話が、
すべてのきっかけになった。尤も奴が現れなくても、
現状がそれほど違うものにはなっていなかったかもしれないが。

ヤタベは俺に中国人投資家が投資先を探しているから、
おまえの得意分野で事業計画をでっち上げて、
とりあえずの資金を突っ込ませろ、取り分は半々だとふっかけてきた。
乗り気はしなかったが、乗らざるをえない状況ではあった。

翌月、俺の口座に今まで扱ったことの無い桁の金額が振り込まれ、約束通りヤタベは半金を持って行き、
その三日後にフィリピンで死んだ。

カジノの入ったホテルの最上階で、
外部からは人が入り込めないスイートルームで、一応突然死ということらしい。詳しいことはわからないが。