テキストサイズ

これが私の仕事

第5章 第四夜

そう。名前は祝いであり呪いである。けして、消すことのできない鎖。名前は、死んでも消えることなく故人と現世を結びつける。そして、生きている時も名前が自分自身に作用する。だから、名前は生まれた瞬間を祝うものであり、死んでもなお、現世と結びつける呪いである。
だから、某映画でもあったように、名前を盗られた者は生きて戻ることができない。
この少年は名前を盗られたわけじゃない。それに、一番下にある記憶を出してきた。名前が変わったとしても、忘れたとしても、盗られたとしても、記憶の一番下には、本人を示す鍵がある。それが名前なんだ。
ほら、映画でも最終的には名前を思い出したでしょ??
盗られても、誰かの心には残っているんだよ。
私『まだ記憶がないからね。仕方ない。ただ君は助かりたい??ここに結びつけられてるのが苦しい??』
真「よく…わかんない…でも、いつまでもここにいるのはダメな気がする…」
私『……誰かに呼ばれてるのかね??』
真「えっ??」
私『きっと、もう一度君に会いたいって強く願っている人がいるのかも。その想いが強ければ強いほど呼ばれやすくなる。』そう。釈然としなくとも、会いたいって想う人がいれば此処から抜け出さなきゃと思うようになる。
以前、死に神長が言っていたことを思い出す。
「生きている人が故人に会いたいって想うと、夢とかに出てくるってことがあるでしょ??それは、生き人が故人を呼んでいるの。」
「呼ばれているうちに解放するのが一番楽。呼ばれていた子が呼ばれなくなった瞬間が一番悪霊になりやすい。」
「呼ばれる子なんて滅多に居ないわ。だって、呼ばれるような子なんて成仏しやすいもの。」
「呼ばれる子の死因のほとんどは、交通事故や殺人。望まぬ死をした者。」
定石に当てはめれば交通事故か殺人事件に巻き込まれた。
ふむ…とりあえず記憶を集めるか。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ