テキストサイズ

対峙

第3章 episode 2

休みに人と出掛けるなんていつぶりだろう。
光彦が遊びに誘ってくれた。
友達なのだから普通のことなんだけど、その日の朝からボクは随分と浮かれていた。

「どこか出掛けるの?」

珍しいね、なんて眼鏡をかけ直しながら院長が声を掛けてきた。

「…はい」

「水臭いな、言ってくれても良かったのに」

ニコニコ笑いながら、それでいてどこか寂しげな表情が見えた。
「私はキミの親のようなものなんだからね」はいつしか院長の口癖になっていた。
孤児院にいる子供みんなに言っているのだろうけど、なまじボクの両親を知っているらしい院長の言葉は別の含みを持っているようで、いまいち素直になれないでいた。

「…行って来ます」

院長とボクの両親はどういう知り合いなのか…未だに聞けないボクは自分にもどかしさを感じている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ