対峙
第4章 episode 3
「先生」
院長室の前でボクは彼、澤村浩一を呼び止めた。
澤村は30半ばを過ぎた頃だ。
「なに?キミから話しかけてくれるなんてなんだか嬉しいね」
きっとそれは彼の本心だ。
根拠はないけど、屈託なく笑う顔を見ればわかる。
「べつに…大したことじゃないんだけど」
「なんでも言って。お願い事なら出来るだけ頑張るから」
この調子だからいつも話せずにいた。どうもボクはづかづか入り込んでくる人に弱い節がある。
光彦もまた然り…
「…先生さ、随分前にボクの両親と知り合いとか言ってたよね」
澤村の眉が少し動いた気がした。やはり嘘なんだろうか…
ボクの思いを察してか、澤村が先に口を開いた。
「ごめん…厳密には一方的な知り合いなんだ」
澤村が話した内容は、ボクの想定外のことばかりだった。
一方的な知り合い…つまり虐待を受けていたボクは既に孤児院に預けられる一歩手前まできていたらしく、児童相談所の職員は澤村に逐一報告、相談。
その矢先の事件だったとのこと。
だから一方的な知り合い。
「べつに隠すようなことじゃなかったんだけどさ」
照れたように笑う澤村に、ボクはあまりにも拍子抜けしてしまって気の抜けた返事しかできなかった。
院長室の前でボクは彼、澤村浩一を呼び止めた。
澤村は30半ばを過ぎた頃だ。
「なに?キミから話しかけてくれるなんてなんだか嬉しいね」
きっとそれは彼の本心だ。
根拠はないけど、屈託なく笑う顔を見ればわかる。
「べつに…大したことじゃないんだけど」
「なんでも言って。お願い事なら出来るだけ頑張るから」
この調子だからいつも話せずにいた。どうもボクはづかづか入り込んでくる人に弱い節がある。
光彦もまた然り…
「…先生さ、随分前にボクの両親と知り合いとか言ってたよね」
澤村の眉が少し動いた気がした。やはり嘘なんだろうか…
ボクの思いを察してか、澤村が先に口を開いた。
「ごめん…厳密には一方的な知り合いなんだ」
澤村が話した内容は、ボクの想定外のことばかりだった。
一方的な知り合い…つまり虐待を受けていたボクは既に孤児院に預けられる一歩手前まできていたらしく、児童相談所の職員は澤村に逐一報告、相談。
その矢先の事件だったとのこと。
だから一方的な知り合い。
「べつに隠すようなことじゃなかったんだけどさ」
照れたように笑う澤村に、ボクはあまりにも拍子抜けしてしまって気の抜けた返事しかできなかった。