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対峙

第5章 episode 4

「光彦」

珍しくひとりでいる光彦に声をかける。
何もなかったかの様に普段通りの光彦。
実際にはボクの方が意識しすぎなだけなんだけど…。

「どうした?」

「あのさ、」

と言いかけてふと思う。
…何を聞けばいい?
直接聞く?

「ん?」

「あのさ…光彦はうちの院長と知り合い…とかないよな?」

しどろもどろになりながらも聞くことができた。
光彦はいつも通り。表情は読めない。

「…父親だよ」

今は何の関わりもないけどね、と付け加える。

「物心ついて、しばらくしたら離婚したみたいだからよくは覚えてないけど。…俺はあの人キライだから」

光彦の言葉は台詞のように淡々としてて、ボクはなんだかドラマでも見ている気分だった。

「お父さん…キライ?」

「誠二は自分の親を好きか?」

「ボクは…」

「そういうことだよ」

そういうこと?…わからない。
光彦は困惑しているボクを眺めてふっと笑う。

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