テキストサイズ

対峙

第7章 episode -



「誠二…その子、お友達…?」

母さんは不安げな表情で聞いてくる。

「うん、そうだよ」

「帰ってもらいなさい」

ボクが言い終わるか否かのうちに母さんが口を開いた。
きっとボクと同じ心配をしている。
光彦が父親に殴られるんじゃないか、と。

「おじゃまします」

光彦は靴をきちんと揃えて脱ぎ、ひらりと玄関に上がる。
スタスタと歩き始める光彦に置いて行かれないようにボクは台所へ向かった。
包丁を取り出すのに何の障害もなかった。

母さんはボクたち2人を止めようとキョロキョロしている。
台所から物騒なモノを持ってきたボクへ向かってくる。

「っ…誠二っそんな危ないもの置きなさいっ」

『あ?誰だおまえ』

奥の居間から父親の声が聞こえてきた。
母さんもそちらに気を取られている。

『あいつの友達?出ていけよ』

『っいたい』

パンッと乾いた音が響いた。
ボクはハッとする。
゙光彦を助けなきゃ゙
ボクは廊下を走り出す。

「みっちゃんっ」

無我夢中で目の前の母親を振り払う。
ぎゃあ、と声が聞こえた気がしたが、今は光彦を助けなきゃいけない。

とにかく光彦を助けなきゃいけなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ