対峙
第7章 episode -
居間に入るとまず父さんの後ろ姿が見えた。
小さな光彦はすっかり父さんに隠れてしまってよくは見えなかったが、どうやら腕を掴まれている様子だった。
「みっちゃん…みっちゃんっ、ぅわあああ」
ボクの声に振り返った父さんの脇腹に持っていたモノをズシリと押し込む。
「ぅぐ…おまえ…っ」
父親は光彦から手を離し、数歩後ずさり壁に背を預けズルズルと座り込む。
ふと後ろから荒い息づかいを感じて振り返る。
「誠二…あ、なた…」
コポコポと水音をたてながら母さんが父さんへと歩み寄る。
「…母さん?」
ボクがやったの?
ボクの目の前を通り過ぎ、母さんは父さんに被さるようにして崩れ落ちた。
みるみる2人の周りは赤い海になる。
「せいじ」
どのくらい経っただろう。
薄暗くなり始めた室内で、光彦の表情は読み取りにくかった。
「自由になったんだよ」
そう言う光彦の口元は口角が上がっていたようだった。