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偽装結婚~代理花嫁の恋~

第6章 ★Sadness~哀しみ~★

 由梨亜の身体を包んだ焔が今しも燃え上がろうとする間際、三鷹は由梨亜の悲鳴を飲み込むように彼女の唇を塞ぎ、烈しく貪るようなキスをした。
「訊きたいことがあるの」
 ひとときの嵐が漸くおさまった後、由梨亜は三鷹を見上げた。
「何だい?」
 愛おしむような眼で見つめられ、由梨亜は泣きたいような気持ちに包まれた。
 私は本当に彼に愛されていると信じても良いの?
 三鷹の言葉を心から信じてしまいそうな自分時自身が堪らなく怖かった。
「今夜はどうしてスーツを着ていたの? 今朝、家を出るときに着ていた服とは全然、違うけど」
「―」
 この時、いつもの由梨亜であれば、三鷹の端正な顔がほんの一瞬だけ表情を失ったことに気づいただろう。
 だが、このときの由梨亜は当然ながら、情事の深い余韻からまだ到底、抜け出せてはいなかった。
 三鷹が妖艶に微笑んだ。それはこの世の女という女であれば、誰もが虜にならにずにはいられないほど悪魔的な凄絶すぎる美しい微笑だった。これまで彼がこんな露骨すぎる誘惑めいた微笑みで由梨亜を誘ったことはなかった。
 三鷹は小首を傾げた。
「今は俺以外のことは考えないで」
 ハスキーな声が耳朶を掠める。彼は下になった由梨亜の腰を抱え、両脚を自分の身体に絡めさせた。かと思うと、次の瞬間には由梨亜は最奥まで一挙に刺し貫かれた。
 あまりの衝撃に眼裏が一瞬、白く染まり、意識が遠くなった。
「でも―」
 由梨亜がそれでも意思の力を総動員して何か訴えようとするのに、彼はゆっくり猛り立った剛直を出し入れする。
「ここが由梨亜のいちばん感じやすいところだろ?」
 顔を覗き込まれ、由梨亜は真っ赤になって横を向いた。
「三鷹さん、先に話を聞いて」
 由梨亜が懸命に訴えても、三鷹は素知らぬ顔で鋭い切っ先を由梨亜の感じやすい内奥にすりつけてゆく。

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