偽装結婚~代理花嫁の恋~
第6章 ★Sadness~哀しみ~★
由梨亜が重い口をやっとの想いで開く。このままでは先へは進めない。これほどまでに手酷い形で裏切られた今ですら、由梨亜はまだ三鷹を愛しているのだ。
だが、いずれにしろ、彼との別離は刻一刻と迫りつつある。彼の予想外の裏切りにより、その別れが二週間、早まっただけにすぎない。
しかし、その事実は由梨亜を打ちのめした。二週間という彼と過ごす残り少ない日々を、大切に過ごそうと考えていた矢先に、彼の裏切りが発覚したのだ。
「由梨亜」
名を呼ばれ、由梨亜は彼を真正面からキッと見据えた。
「そんな風に気安く呼ばないで」
その鋭い指摘に、三鷹が酷く哀しそうな顔をした。
彼のそんな表情を見ただけで、不覚にも由梨亜の心は折れそうになってしまう。裏切られたのは自分の方なのに、傷ついた様子の彼を抱きしめて慰めてあげたいと思ってしまうのだ。
何て私は愚かなのだろう。こんなだから、三鷹に最初から上手く利用され、挙げ句に、まんまと騙されたのだ。
由梨亜の思惑を知ってか知らずか、三鷹は哀しげな表情はそのままに深い息を吐いた。
「俺は君を取るに足りないだなんて思ったことは一度もない。むしろ、どんな逆境にいても、いつも明るく咲いて人の心を慰める可憐な花のようだと思った。前向きで優しくて、強いし、ビジネスの分野でもかなりの資質を持っていることは君と話してすぐに判ったよ。君とめぐり逢ったことで、俺は確かに救われた」
由梨亜が形の良い細い眉をつりあげた。
「救われたですって? 随分と都合の良い科白ね。あなたは自分だけが救われたらそれで良いから、私を騙して都合良く利用したの?」
「違う、そんなんじゃない! 君を利用するつもりは、これっぽっちもなかったよ」
「じゃあ、騙したことについては、どう言い訳するつもり?」
その問いに、三鷹は小さく息を呑んだ。
「俺にはとかくの風評がある。色々なろくでもない噂を聞かせて、君に嫌われるのは耐えられなかった」
彼は口ごもり、ひとたび言葉を切った。次に発すべき言葉を見つけかねているように視線を宙にしばし彷徨わせた。
だが、いずれにしろ、彼との別離は刻一刻と迫りつつある。彼の予想外の裏切りにより、その別れが二週間、早まっただけにすぎない。
しかし、その事実は由梨亜を打ちのめした。二週間という彼と過ごす残り少ない日々を、大切に過ごそうと考えていた矢先に、彼の裏切りが発覚したのだ。
「由梨亜」
名を呼ばれ、由梨亜は彼を真正面からキッと見据えた。
「そんな風に気安く呼ばないで」
その鋭い指摘に、三鷹が酷く哀しそうな顔をした。
彼のそんな表情を見ただけで、不覚にも由梨亜の心は折れそうになってしまう。裏切られたのは自分の方なのに、傷ついた様子の彼を抱きしめて慰めてあげたいと思ってしまうのだ。
何て私は愚かなのだろう。こんなだから、三鷹に最初から上手く利用され、挙げ句に、まんまと騙されたのだ。
由梨亜の思惑を知ってか知らずか、三鷹は哀しげな表情はそのままに深い息を吐いた。
「俺は君を取るに足りないだなんて思ったことは一度もない。むしろ、どんな逆境にいても、いつも明るく咲いて人の心を慰める可憐な花のようだと思った。前向きで優しくて、強いし、ビジネスの分野でもかなりの資質を持っていることは君と話してすぐに判ったよ。君とめぐり逢ったことで、俺は確かに救われた」
由梨亜が形の良い細い眉をつりあげた。
「救われたですって? 随分と都合の良い科白ね。あなたは自分だけが救われたらそれで良いから、私を騙して都合良く利用したの?」
「違う、そんなんじゃない! 君を利用するつもりは、これっぽっちもなかったよ」
「じゃあ、騙したことについては、どう言い訳するつもり?」
その問いに、三鷹は小さく息を呑んだ。
「俺にはとかくの風評がある。色々なろくでもない噂を聞かせて、君に嫌われるのは耐えられなかった」
彼は口ごもり、ひとたび言葉を切った。次に発すべき言葉を見つけかねているように視線を宙にしばし彷徨わせた。