偽装結婚~代理花嫁の恋~
第2章 ★A women meets a man ★
しかし、若き副社長は手腕を余すところなく発揮し、彼が本社に入り本格的な経営悪化止めるために乗り出してから、わずか数ヶ月で経営は徐々にではあるが、持ち直してきているという。このままでいけば、長らく続いた赤字から黒字に転じるのは今年の中だろう噂されていた。まさに、辣腕のミラクル・プリンスといえよう。
社員の首切りに反対するほどだから、人情に厚い副社長かと思えば、意外にそうでもない。仕事にかけてはどこまでも冷徹で、時には信じられないほど非情になることもあるという。
日本だけでなく海外にも名の知れたS物産の副社長にして後継者、しかもモデル並のプロポーションと俳優並みのルックスを併せ持つ。そのことがこの奇蹟のプリンスをより華麗な伝説の男にしている。多くの美女たちと関係を持ち、女性との華やかな噂が絶えない。
―城崎さんも気の毒だったわね。どうも社長にミラクル・プリンスが進言したらくして、社員の首切りもひとまずもう見合わせることになったそうよ。社長も今までは渋っていたけど、プリンスのお陰で悪化の一途だった経営状態も少しずつ持ち直してきてるでしょう。だから、仕方なしにプリンスの進言を聞き入れることにしたらしいわ。
残念だったわね。あと少し踏ん張っていれば、辞めなくて済んだのに。
かつての同僚だった女は慰めるように言ってくれたが、その口調には何となくかすかな優越感が滲んでいたのは由梨亜のひがみだろうか。
私は切り捨てられなかったけれど、あなたは役立たずの烙印を押された上に切り棄てられてしまったのね、可哀想に。
暗にそう言われているようで、由梨亜は何とも不愉快な気分になったものだ。
まあ、会社そのものに恨みがあるわけではないが、やはり、そこまで言われて良い気がするはずもない。お人好しの由梨亜にもなけなしの意地と誇りがある。
―それは結構なことね。でも、今更、会社の内情なんてわざわざ教えてくれなくて結構よ。私は切り捨てられた人間だし、あの会社とは何の関係もないんだから。
我ながら何とも嫌な言い方だと思ったけれど、どうしても止まらなかった。案の定、元同僚は露骨に鼻白んだ顔をして、〝そ、それもそうね〟と早々に店を出ていった。
社員の首切りに反対するほどだから、人情に厚い副社長かと思えば、意外にそうでもない。仕事にかけてはどこまでも冷徹で、時には信じられないほど非情になることもあるという。
日本だけでなく海外にも名の知れたS物産の副社長にして後継者、しかもモデル並のプロポーションと俳優並みのルックスを併せ持つ。そのことがこの奇蹟のプリンスをより華麗な伝説の男にしている。多くの美女たちと関係を持ち、女性との華やかな噂が絶えない。
―城崎さんも気の毒だったわね。どうも社長にミラクル・プリンスが進言したらくして、社員の首切りもひとまずもう見合わせることになったそうよ。社長も今までは渋っていたけど、プリンスのお陰で悪化の一途だった経営状態も少しずつ持ち直してきてるでしょう。だから、仕方なしにプリンスの進言を聞き入れることにしたらしいわ。
残念だったわね。あと少し踏ん張っていれば、辞めなくて済んだのに。
かつての同僚だった女は慰めるように言ってくれたが、その口調には何となくかすかな優越感が滲んでいたのは由梨亜のひがみだろうか。
私は切り捨てられなかったけれど、あなたは役立たずの烙印を押された上に切り棄てられてしまったのね、可哀想に。
暗にそう言われているようで、由梨亜は何とも不愉快な気分になったものだ。
まあ、会社そのものに恨みがあるわけではないが、やはり、そこまで言われて良い気がするはずもない。お人好しの由梨亜にもなけなしの意地と誇りがある。
―それは結構なことね。でも、今更、会社の内情なんてわざわざ教えてくれなくて結構よ。私は切り捨てられた人間だし、あの会社とは何の関係もないんだから。
我ながら何とも嫌な言い方だと思ったけれど、どうしても止まらなかった。案の定、元同僚は露骨に鼻白んだ顔をして、〝そ、それもそうね〟と早々に店を出ていった。