偽装結婚~代理花嫁の恋~
第6章 ★Sadness~哀しみ~★
「へえ、その言葉を全部信じて良いのかしら。昨夜、帰ってきた時、あなたは物凄く酔っていたし、背広のポケットには十数枚の名刺があったわ。ご丁寧に全部、バーやクラブのホステスばかりのね!」
「あれは違う。昨夜、バーやクラブに行ったのは確かだが、接待で行っただけだ。くれる名刺をその場で突き返すのは相手にとって凄く失礼なんだ」
由梨亜が皮肉げに言った。
「生憎と私は夜の世界の社交礼儀なんて知らないし、知りたくもないの。それに、別にいちいち言い訳する必要はないでしょう。私はあなたの本物の奥さんじゃないんだから」
「君はまだ、そんなことを言ってるのか?」
「こちらこそ、その科白の意味を訊きたいわ。私があなたの奥さんではないことは、あなただって十分承知のはずでしょう」
「君は俺と結婚するんだ! 君だって、そのつもりだったんだろう? だから、昨夜、君は俺に抱かれたんじゃないのか? 俺たちは気持ちだけでなく身体の相性も良さそうだし、俺は良い夫になれる自信はある。何不自由ない暮らしも保証してやれるし、夜だって退屈させない」
三鷹が何ものかに憑かれたようにまくしたてる。
「君だって、俺と結婚する気になったから、素直に身を任せた。昨夜は信じられないほど良かったよ。あんなに我を忘れて夢中になれたのは初めてだ。俺の腕の中で瞳を潤ませて乱れる君が尚更愛おしくて堪らなくなった」
「止めて。よくもそんな私的なことを平気で口にできるのね」
自分を騙した卑劣な男に抱かれて、何度も絶頂を味わい、淫らな声を上げた。考えただけで、恥ずかしさと怒りに震えそうになる。
由梨亜は首を振った。
「私が贅沢な暮らしを望んでいると本気で考えているの? 三鷹さん、あなたも言っていたはずよ。愛のない結婚ほど不幸なものはない。私だって、これでも結婚に女らしい夢を見ているの。それに現実として考えても、自分を愛してくれていない相手と結婚はできない」
「だから! 俺は何度も言っているはずだ。君をどうしようもないほど愛しているんだ。結婚するのなら、もう君以外には考えられない」
眼の前に立っている男を、由梨亜はじいっと見つめた。昼間に束の間、見た彼の姿がまざまざと甦った。
「あれは違う。昨夜、バーやクラブに行ったのは確かだが、接待で行っただけだ。くれる名刺をその場で突き返すのは相手にとって凄く失礼なんだ」
由梨亜が皮肉げに言った。
「生憎と私は夜の世界の社交礼儀なんて知らないし、知りたくもないの。それに、別にいちいち言い訳する必要はないでしょう。私はあなたの本物の奥さんじゃないんだから」
「君はまだ、そんなことを言ってるのか?」
「こちらこそ、その科白の意味を訊きたいわ。私があなたの奥さんではないことは、あなただって十分承知のはずでしょう」
「君は俺と結婚するんだ! 君だって、そのつもりだったんだろう? だから、昨夜、君は俺に抱かれたんじゃないのか? 俺たちは気持ちだけでなく身体の相性も良さそうだし、俺は良い夫になれる自信はある。何不自由ない暮らしも保証してやれるし、夜だって退屈させない」
三鷹が何ものかに憑かれたようにまくしたてる。
「君だって、俺と結婚する気になったから、素直に身を任せた。昨夜は信じられないほど良かったよ。あんなに我を忘れて夢中になれたのは初めてだ。俺の腕の中で瞳を潤ませて乱れる君が尚更愛おしくて堪らなくなった」
「止めて。よくもそんな私的なことを平気で口にできるのね」
自分を騙した卑劣な男に抱かれて、何度も絶頂を味わい、淫らな声を上げた。考えただけで、恥ずかしさと怒りに震えそうになる。
由梨亜は首を振った。
「私が贅沢な暮らしを望んでいると本気で考えているの? 三鷹さん、あなたも言っていたはずよ。愛のない結婚ほど不幸なものはない。私だって、これでも結婚に女らしい夢を見ているの。それに現実として考えても、自分を愛してくれていない相手と結婚はできない」
「だから! 俺は何度も言っているはずだ。君をどうしようもないほど愛しているんだ。結婚するのなら、もう君以外には考えられない」
眼の前に立っている男を、由梨亜はじいっと見つめた。昼間に束の間、見た彼の姿がまざまざと甦った。