偽装結婚~代理花嫁の恋~
第1章 ★ 突然の辞職勧告 ★
去年からそのしわ寄せがついに社員にまで及び始め、何回かに分けて大幅な人員削減が行われた。つまり、由梨亜はその人件費削減の何回目かで、ついに〝役立たず〟と見なされ、会社から三行半を突きつけられたということになる。
由梨亜が所属するのは営業部だ。いや、もしくは、だったという方が適切だろうか。とにかく営業に所属して、由梨亜は由梨亜なりに頑張ってきたつもりである。彼女が特に任されていたのは販促、つまり販売促進部門で、夜遅くまで同僚の三村浩二と二人でああでもないこうでもないとキャンペーン内容を考えたり、宣伝文をひねり出すのに苦労したものだ。
その浩二とは友達以上恋人未満といった状態で、休日には共通の趣味であるスキーに二人だけで出かけたりとかなり良い雰囲気だったのだ。
が、由梨亜よりはひと足先に退職した浩二は次の職場で早くも彼女を拵えたらしい。一昨日、浩二から久々にメールが来たと思ったら
―今度、逢わないか? 彼女を紹介するよ。
だなどと、実にあっけらかんとしたものだった。
その夜、由梨亜は大好きなチャン・グンソクが出る韓流ドラマを見ながら、缶チューハイを二本空けて一生分の涙を流し尽くした。
何よ、何が彼女を紹介するですって?
今こそ由梨亜は浩二に言ってやりたかった。会社で由梨亜と浩二が公認の〝恋人〟であったと知らないのは恐らく浩二本人だけではないのかと。
無邪気・無頓着すぎるのも、時には相手に残酷となり得る場合が往々にしてある。浩二の場合がまさにそれだ。
もっとも、浩二は由梨亜を〝彼女〟だと認めたことは一度もないのだし、由梨亜も彼に思わせぶりな態度を取ったことは一度もない。浩二をつなぎ止めておきたければ、由梨亜は、はっきりと言うべきだった。
―私は、あなたにとって何なの?
と、自分の存在を彼に問うべきだったのだ。
それすらせずに、今になって浩二を恨めしく思うのは筋違いというものだろう。
そう、由梨亜は浩二を好きだった。愛しているという感情にはまだほど遠いかもしれないけれど、この想いは異性に対する特定の強い感情に他ならなかった。
由梨亜が所属するのは営業部だ。いや、もしくは、だったという方が適切だろうか。とにかく営業に所属して、由梨亜は由梨亜なりに頑張ってきたつもりである。彼女が特に任されていたのは販促、つまり販売促進部門で、夜遅くまで同僚の三村浩二と二人でああでもないこうでもないとキャンペーン内容を考えたり、宣伝文をひねり出すのに苦労したものだ。
その浩二とは友達以上恋人未満といった状態で、休日には共通の趣味であるスキーに二人だけで出かけたりとかなり良い雰囲気だったのだ。
が、由梨亜よりはひと足先に退職した浩二は次の職場で早くも彼女を拵えたらしい。一昨日、浩二から久々にメールが来たと思ったら
―今度、逢わないか? 彼女を紹介するよ。
だなどと、実にあっけらかんとしたものだった。
その夜、由梨亜は大好きなチャン・グンソクが出る韓流ドラマを見ながら、缶チューハイを二本空けて一生分の涙を流し尽くした。
何よ、何が彼女を紹介するですって?
今こそ由梨亜は浩二に言ってやりたかった。会社で由梨亜と浩二が公認の〝恋人〟であったと知らないのは恐らく浩二本人だけではないのかと。
無邪気・無頓着すぎるのも、時には相手に残酷となり得る場合が往々にしてある。浩二の場合がまさにそれだ。
もっとも、浩二は由梨亜を〝彼女〟だと認めたことは一度もないのだし、由梨亜も彼に思わせぶりな態度を取ったことは一度もない。浩二をつなぎ止めておきたければ、由梨亜は、はっきりと言うべきだった。
―私は、あなたにとって何なの?
と、自分の存在を彼に問うべきだったのだ。
それすらせずに、今になって浩二を恨めしく思うのは筋違いというものだろう。
そう、由梨亜は浩二を好きだった。愛しているという感情にはまだほど遠いかもしれないけれど、この想いは異性に対する特定の強い感情に他ならなかった。