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偽装結婚~代理花嫁の恋~

第2章 ★A women meets a man ★

要するに三鷹が持ちかけているのは、偽装結婚に他ならない。ちゃらんぽらんに見えるけれど、嘘偽りを並べ立てて他人を騙すようなあくどい男にはどうしても思えなかった。
 この男が困っているのは真実ではあるのだろう。人助けにもなって、大金が入るのなら、片棒を担いでも良いとは思い始めている。しかし、偽装でも仮にも〝結婚〟となれば、婚姻関係が生じてしまう。法律上、婚姻関係が派生すれば、後々、厄介なことになる。
 三鷹は眩しいほどの笑みを由梨亜に向けた。
「それなら心配はなくて良い。俺が提案しているのはあくまでも見せかけだけで、本当に結婚するわけじゃないから、もちろん籍も入れない。もちろん、君が入れたければ入れても俺は拘らないけどね。契約期間が終わってもまだ婚姻関係を続けたいと君が望めば、そのとおりにしても良いんだよ」
「じょっ、冗談でしょ。誰があなたなんかと一生過ごすものですか」
「残念だなぁ。君といれば、結構退屈せずに済みそうなんだけど。由梨亜ちゃん」
「馴れ馴れしく名前を呼ばないでくださいね」
「でも、君ももうその気になってるんだろう? 困ってる俺を君は放っておけないんだよねぇ。まあ、人助けと思って引き受けてよ。一生、恩に着るからさ」
「だから、一生はお断りします。私があなたに協力できるのは、あなたと約束した期間の間だけ。そ、それから―」
 由梨亜が言いかけて紅くなるのを見、三鷹がしたり顔で頷いた。
「大丈夫、俺は紳士だからね。花嫁の代役を頼んだ子を頭からバリバリっと食ったりはしないから、安心して」
 三鷹が由梨亜を安心させるように微笑みかけた。
「つまり、俺は君にけして手を出しちゃいけない。そういうことだろ、君が言いたいのは」
「そっ、そうです。それは約束して貰えますね?」
「うーん、一応。できると思う、っつうか、努力するよ」
「やっぱり、私、考え直します」
 顔を引きつらせて回れ右をしようとする由梨亜を三鷹が慌てて引き止める。
「冗談だって。冗談。俺がそんな鬼畜に見える?」
「十分、見える、怪しすぎる」
 由梨亜がコクコクと何度も頷くと、三鷹は爆笑した。

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