偽装結婚~代理花嫁の恋~
第3章 ★ 衝撃 ★
―何とか薬で発作を抑えるようにこちらも全力を尽くします。城崎さんの場合、まだ年齢的にも若いので、著しい悪化は避けられると思いますよ。
と、最後は励ますように言ってくれるのは、このいつも感情を表にしない医師には珍しいことだった。
発作を抑制するためには、これまでより強い薬を使うことになり、そのために頭痛やふらつきなどの副作用が出てしまう可能性があるとも説明があった。
由梨亜は最後までとうとう訊けなかったことがあった。それは、小さな発作だけでなく、今後は大きな発作も来る可能性があるのかどうかという不安についてだ。
当然、想定に入れておかねばならない問題ではあるわけだが、特に医師が何も触れなかったのだからと由梨亜も敢えて訊かなかったのは、やはり、その応えを聞くのが怖かったからだ。
もっと大きな発作が来れば、そのときは生命取りになるかもしれないなどと宣告されれば、もう二度と立ち直れないような気がした。
そんなことを考えている中に、ついボウとしてしまっていた。
「済みませ~ん、まだですかぁ」
すぐ後ろに並んでいた高校生らしい女の子二人組がしきりに呼びかけている。現実に引き戻され、由梨亜は謝った。
「ごめんなさい」
持参していた通帳をバッグから取り出し、ATMに入れると、ほどなくして記帳された通帳が返ってくる。
最新の欄には、今朝付けで五十万が広澤三鷹の口座から振り込まれたと記載されていた。
昨日、由梨亜の眼の前で三鷹が見せた五十万は結局、彼に持っていて貰った。五十万もの現金を持ち帰るのは気が進まなかったし、そのときはまだ偽装結婚の話をはっきりと承諾したわけではなかったからである。
一日の空白をおくのは賢明な判断のように思えた。幾ら他人を騙すような極悪人には見えなくても、三鷹が本当に五十万を振り込むかどうかについては半信半疑であった。途中で気が変わるということだってある。
念のために、これはどうしても必要な儀式だった。そう、儀式。偽物の花嫁になるためには、あの男が信頼するに足る人間がどうかを十分に見極めなければならない。
やはりと言うべきか、意外と言うべきか、三鷹はちゃんと金額どおりの金を由梨亜名義の指定口座に振り込んでいた。
と、最後は励ますように言ってくれるのは、このいつも感情を表にしない医師には珍しいことだった。
発作を抑制するためには、これまでより強い薬を使うことになり、そのために頭痛やふらつきなどの副作用が出てしまう可能性があるとも説明があった。
由梨亜は最後までとうとう訊けなかったことがあった。それは、小さな発作だけでなく、今後は大きな発作も来る可能性があるのかどうかという不安についてだ。
当然、想定に入れておかねばならない問題ではあるわけだが、特に医師が何も触れなかったのだからと由梨亜も敢えて訊かなかったのは、やはり、その応えを聞くのが怖かったからだ。
もっと大きな発作が来れば、そのときは生命取りになるかもしれないなどと宣告されれば、もう二度と立ち直れないような気がした。
そんなことを考えている中に、ついボウとしてしまっていた。
「済みませ~ん、まだですかぁ」
すぐ後ろに並んでいた高校生らしい女の子二人組がしきりに呼びかけている。現実に引き戻され、由梨亜は謝った。
「ごめんなさい」
持参していた通帳をバッグから取り出し、ATMに入れると、ほどなくして記帳された通帳が返ってくる。
最新の欄には、今朝付けで五十万が広澤三鷹の口座から振り込まれたと記載されていた。
昨日、由梨亜の眼の前で三鷹が見せた五十万は結局、彼に持っていて貰った。五十万もの現金を持ち帰るのは気が進まなかったし、そのときはまだ偽装結婚の話をはっきりと承諾したわけではなかったからである。
一日の空白をおくのは賢明な判断のように思えた。幾ら他人を騙すような極悪人には見えなくても、三鷹が本当に五十万を振り込むかどうかについては半信半疑であった。途中で気が変わるということだってある。
念のために、これはどうしても必要な儀式だった。そう、儀式。偽物の花嫁になるためには、あの男が信頼するに足る人間がどうかを十分に見極めなければならない。
やはりと言うべきか、意外と言うべきか、三鷹はちゃんと金額どおりの金を由梨亜名義の指定口座に振り込んでいた。