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偽装結婚~代理花嫁の恋~

第3章 ★ 衝撃 ★

「ああ、腹減った。ピザでも宅配で取ろうか? 普通は仕事帰りはどこかで食べてくるんだけど、今日は奥さんが待ってるから、急いで帰ってきたんだよ」
 〝奥さん〟の部分はさらりと無視して、由梨亜は提案した。
「宅配のピザなんて、高いでしょ。勿体ないわ。そんなことしなくても、何か冷蔵庫にあれば、私が作りますけど」
 三鷹は感に堪えたように言う。
「うーん、実に良いな。可愛い奥さんの手作り料理。もちろん大歓迎だけど、昼間も言ったように、この結婚はあくまでも見せかけだけのものだから、何も君が主婦の仕事をする必要はない。君はここにいて、俺の妻の振りをするだけで良いんだ」
 そのひと言で結局、宅配のピザを取ることになり、三鷹が携帯で注文した。
 彼が使うのは最新型のスマートフォンである。流石に金持ちの息子は持ち物、考え方からして違うようだ。
 三十分ほどでインターフォンが鳴り、宅配のピザが届いた。三鷹が冷蔵庫を開け、トレーにワイングラスとワインを乗せてくる。
「さあ、座って」
 彼は甲斐甲斐しくピザを切り分け、小皿に乗せて由梨亜に渡した。
「ワインもどう? これ、フランス産なんだけど、結構いけるよ」
 どうせ一本が何十万もする馬鹿高い最高級ワインなのだろう。
 由梨亜は首を振る。
「アルコールは遠慮します」
「何で? もしかして飲めないとか?」
「いいえ、家では、たまに飲んでましたから」
 控えめに否定すると、三鷹はますます不審げな顔になった。
「もしかして、俺のことを警戒してる? 君がぐでんぐでんに酔っぱらったところを俺が突然、飢えた狼と化して襲うなんて思ってたりしない?」
 由梨亜は笑いながら首を振った。
「それも少しはありますけど、もちろん、それだけじゃありません。そんなことがあって欲しくはないんですが、いつ病院から電話がかかってくるか判らないでしょう。だから、素面でいた方が良いかなって」
「確かに、君の言うとおりだ。俺の方が思慮に欠けてたね」
 三鷹はあっさりと認め、手酌で自分のグラスにワインを注いだ。

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