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偽装結婚~代理花嫁の恋~

第3章 ★ 衝撃 ★

 つまり、二人の間で偽装結婚が続いている間も、互いに性的行為を相手に強要することはできないという内容だ。由梨亜は三鷹にはっきりと告げたように、基本的には彼を信頼している。しかし、人間という生きものはいつ何時、気が変わるかは判らないし、どんなに理性的な人間でも、魔が差すということは往々にしてある。
 だから、三鷹が果たして最後まで約束を守ってくれるかどうか、実のところはかなり不安だったのだ。だが、彼は卑猥な冗談を平気で口にすることはあっても、現実に由梨亜が嫌がるようなことを無理強いする風はない。
 現に今だって、寝室を見るのはいやだと言えば、あっさりと素通りしてくれた。
「ここが由梨亜ちゃんの寝室ね」
 最後に案内されたのがどうやら自分の部屋になるらしい。入ってみると、ここも広々として内装は淡いピンクとベージュ系を基調としている。ベージュの壁紙にパステルピンクの小さな薔薇が散っている。
 ベッドは今、若い女の子の間で流行っている姫風、つまりプリンセス仕様の乙女チックなデザインだ。こちらもリネン類は淡いベージュにピンクの薔薇と壁紙とお揃いだ。
 南向きの窓際にベッドが据えつけられており、窓には白いレースのカーテンが掛けられている。
 その他には小さな丸テーブルとオシャレでコンパクトなドレッサー、これは姫風のベッドとお揃いらしい。
「素敵だわ」
 思わず声に出して言ってから、三鷹を見上げた。
「気に入ってくれて良かった」
 三鷹も満足そうな面持ちだ。
「まさか、この部屋はわざわざ内装を変えたの?」
 半信半疑で訊ねたら、三鷹はいともあっさりと頷いた。
「幾ら偽装結婚でも、契約が続いている間は俺の奥さんだからね。少しでも快適に過ごして貰えれば良いなと思って」
「嬉しいけれど、勿体ないわ。たった二、三ヶ月しか使わないのに」
 三鷹の声が少し低くなった。
「最初は短くても半年は君がここにいると思ってたから。でも、それはもう気にしなくて良い。お袋さんのことがあるんだから、君はやはりお袋さんの許に帰るべきだ」

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