偽装結婚~代理花嫁の恋~
第3章 ★ 衝撃 ★
「ありがとう」
由梨亜が素直に礼を言うと、三鷹は少し面映ゆげに頭をかいた。
「どうもね。言いたい放題の君にそんな風に言われると、こっちの方が照れてしまう」
「広澤さんのお母さんは今、どうしていらっしゃるの?」
「ねえ、その広澤さんていう呼び方、少し変じゃない?」
「そうかしら」
「一応、建前だけでも夫婦なんだから、名前で呼んで欲しいな」
子どもが母親にねだるように言われ、由梨亜は知らず頷いていた。
「判った、じゃあ、三鷹さん?」
「うん、それで良い」
彼は至極満足げに頷いている。
「さっきの話」
唐突に言われ、由梨亜は眼を見開いた。
「俺の母親のこと、訊いただろう」
「ええ。でも、話したくないのなら無理に話さなくても良いのよ」
人間なら誰でも他人に話したくないこと、踏み込まれたくないことはあるものだ。それを無理に訊き出そうとは思わない。
「君って本当に優しいね、由梨亜ちゃん」
真正面から黒瞳に見つめられ、由梨亜は思わず心臓が跳ねた。どうも、この男に名前を呼ばれると、何だか妙に心がざわめいてしまう。それは今まで一度も体験したことのない―浩二と過ごした時間にはなかったことだ。
「一度、お袋に逢ってやってよ。親父にまで逢わせようとは言わないけど、母親なら良いかな」
遠慮がちに言われ、いやとは言えなかった。何より、このときの三鷹の声がひどく淋しげで。
「構わないわ」
「そう、じゃあ、また、お袋のところに連れてゆくよ」
三鷹はそれきり両親の話には触れなかった。
「じゃあ、俺、ちょっと仕事の残り片付けてから風呂入るし。君はどうする?」
「シャワーが使いたいんだけど、あなたの後で良いわ。それまでDVDでも観ていたいんだけど、良いかしら」
「全然、好きに使って」
その言葉に甘えて、由梨亜はリビングに戻りソファに座った。身体が沈み込んでしまいそうなほど柔らかい。
由梨亜が素直に礼を言うと、三鷹は少し面映ゆげに頭をかいた。
「どうもね。言いたい放題の君にそんな風に言われると、こっちの方が照れてしまう」
「広澤さんのお母さんは今、どうしていらっしゃるの?」
「ねえ、その広澤さんていう呼び方、少し変じゃない?」
「そうかしら」
「一応、建前だけでも夫婦なんだから、名前で呼んで欲しいな」
子どもが母親にねだるように言われ、由梨亜は知らず頷いていた。
「判った、じゃあ、三鷹さん?」
「うん、それで良い」
彼は至極満足げに頷いている。
「さっきの話」
唐突に言われ、由梨亜は眼を見開いた。
「俺の母親のこと、訊いただろう」
「ええ。でも、話したくないのなら無理に話さなくても良いのよ」
人間なら誰でも他人に話したくないこと、踏み込まれたくないことはあるものだ。それを無理に訊き出そうとは思わない。
「君って本当に優しいね、由梨亜ちゃん」
真正面から黒瞳に見つめられ、由梨亜は思わず心臓が跳ねた。どうも、この男に名前を呼ばれると、何だか妙に心がざわめいてしまう。それは今まで一度も体験したことのない―浩二と過ごした時間にはなかったことだ。
「一度、お袋に逢ってやってよ。親父にまで逢わせようとは言わないけど、母親なら良いかな」
遠慮がちに言われ、いやとは言えなかった。何より、このときの三鷹の声がひどく淋しげで。
「構わないわ」
「そう、じゃあ、また、お袋のところに連れてゆくよ」
三鷹はそれきり両親の話には触れなかった。
「じゃあ、俺、ちょっと仕事の残り片付けてから風呂入るし。君はどうする?」
「シャワーが使いたいんだけど、あなたの後で良いわ。それまでDVDでも観ていたいんだけど、良いかしら」
「全然、好きに使って」
その言葉に甘えて、由梨亜はリビングに戻りソファに座った。身体が沈み込んでしまいそうなほど柔らかい。